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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 その小説の題名は〈ノートパソコンの行方・新幹線こだま刺殺事件〉と題されていた。
 京都のハイテク企業a社に勤める研究員Aが、東京で開催されるビジネスディナー、そこでクライアントへのプレゼンをするため京都駅から新幹線に乗る。
 そんなところからストーリーは始まっていた。そしてその粗筋は次のようになっていたのだ。

 研究員Aは大事なプレゼンであり、前もってその技術資料をじっくりと目を通しておきたい。そう思ったのだろうか、空席がありゆったりとする京都駅午後二時〇五分発のこだま六六二号に乗車した。
 そして名古屋駅を過ぎ、次に三河安城駅に到着する前のことだった。
 車輌デッキで、研究員Aが刺殺されているのが発見された。そして、Aのノートパソコンは盗まれていた。

 捜査は難航したが、事件は解決する。
 この犯行に及んだのは、その時間帯に東京駅から京都駅に向かうライバルb社の研究員Bだった。
 そのBは東京駅から十二時五六分発の下りこだま六五七号に乗車した。従ってBは、a社の研究員Aが上りのこだまに乗っていたため、Aとの接点はなく、殺人は不可能と主張していた。

 しかし、それは見事に見破られた。
 Bは東京駅の十九番線ホームから、そのこだまに乗ったことは事実だった。
 しかし、Bの足取りは次のようなものだった。

 まずこだまで、新横浜駅で降り、後続の午後一時二九分発ののぞみ三七号に乗り移った。
 そして、そののぞみで名古屋駅に午後二時五一分に到着した。
 そこでBは、Aが乗る東京行きの上りこだま六六二号を待つ。
 そして、それは四分遅れの午後二時五六分に名古屋駅に到着し、Bはそれに乗り換えた。

 そこで容疑者Bは、次駅の三河安城駅に着くまでの僅かな時間に、a社研究員Aを人気のないデッキへと呼び出し、そして刺殺した。
 その後、技術情報がメモリーされてあるノートパソコンを盗み、三河安城駅で午後三時一〇分に降車する。
 Bはそこでしばらく待ち、午後三時三一分に到着してくる元の、東京で乗り込んだこだま六五七号に戻った。

 こうして容疑者Bは午後四時三八分に京都駅へと到着し、ノートパソコンを抱えて姿を消したのだった。