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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 宙蔵がマンションにいると、夜の八時頃に桜子が訪ねて来る。
 そして、珍しく夕食を作ってくれた。
 久し振りに夫婦で酒も酌み交わす。
 しかし、宙蔵に睡魔が襲ってくる。そのため夜の十時前にベッドに入る。
 それは桜子が酒に睡眠薬を注入しておいたからだ。

 それにより宙蔵は六畳間の寝室で高いびきで熟睡してしまう。
 桜子はそれを確認してから、外で待つ光樹に連絡する。
 ドライアイスが前もって貼り付けられた十枚の油絵キャンパスを、光樹に運び入れてもらう。

 桜子と光樹は、その一キログラムずつに小分けされたドライアイスを、宙蔵が寝るベッドルームに持ち込む。
 そして、その部屋を完璧に密閉し、二人は夜の十一時頃にマンションから出る。
 その後、外のそれぞれの場所で過ごし、アリバイを作る。

 室内に置かれたその小分けされたドライアイスは、徐々に二酸化炭素へと昇華する。
 約四時間が経過し、夜の三時。算段した通り寝室内の二酸化炭素は充分に致死量に達する。
 このようにして、宙蔵は部屋内に充満した二酸化炭素で中毒死をした。

 そして死亡時刻は、桜子が目論んだ深夜の二時から三時となった。当然この時間帯には桜子も光樹も現場にはいなかった。
 二人には完璧なアリバイがある。

 またマンションのドアは桜子が立ち去った時のままで、その状態が保たれている。
 つまり、宙蔵が眠り続けて死に至ったため、ドアチェーンは外されたままだった。

 そして一夜が明け、朝となる。まず光樹が桜子から渡された鍵で、ドアを開け、マンション内へと入る。
 そして寝室に充満した二酸化炭素を換気扇等で抜き、宙蔵の死を確認する。またキャンバスをリビングへと片付ける。

 その後、宙蔵の事故死を装うために、寝煙草で起こるボヤを想定して、ベッドに火を点ける。
 光樹は自分で起こしたボヤを二酸化炭素消化器で消す。
 その後に玄関へと行き、ドアチェーンの台座のネジを緩める。そしてドアチェーンを掛けておく。

 光樹は外で待つ桜子に準備万端と窓から合図を送り、玄関横のバスルームに隠れる。
 そして、桜子がドアチェーンを破って入って来るのを待つ。
 しばらくの時間経過後に、桜子は管理人の面前でドアに体当たりをしてドアを破る。

 それはいかにもドアチェーンがしっかりと掛けられているかのように、大袈裟に。
 それにより中は密室状態であることを強調する。
 こうして管理人に、それを強烈にインンプットし、その後マンション内へと共に入る。

 二人は真っ直ぐに寝室へと進み、死亡している宙蔵を発見する。そんな慌ててパニックな状況下で、光樹は管理人に見付からないようにバスルームから出て来る。
 約束通り展覧会に出品する絵を取りに来たと言いながら、二人の手助けをする。

 これにより宙蔵は、偽装された通り密室内でボヤを起こし、その消化のために使った消化器の二酸化炭素で、夜の二時から三時頃に中毒死したこととなったのだ。