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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 しかし、事故死のあった朝、桜子は管理人の見る前で、ドアチェーンを突き破ったと言う。
 女性一人がドアに体当たりして、ドアチェーンが簡単に壊れるものなのだろうか?

 事故から一週間後、霧沢は腑に落ちずマンションを訪ねた。
 その時管理人は「奥様が二度ほどドアに体当たりしやはったんですわ、たまたまなんでしょうなあ、チェーンの先をはめ込む台座ごと外れましてね」と言っていた。
 今考えれば、まったく不思議な話しだ。あれだけ締め付けておいた台座、それごと外れるなんてあり得ないことなのだ。

 その他にも理解に苦しむことがある。たとえば、宙蔵は商売柄油絵のオイルの臭いを嫌い、エアコンを付けても換気扇を回し続けていた。室内で消化器を使用したとしても、換気は良いはずだ。
 さらに管理人は「画廊を経営してはる滝川光樹さんが、展覧会に出展する花木さんの絵を取りに来ゃはりましてね」と言っていた。
 そして、その後管理人は「友達の死を確認しておきたいんでっしゃろ、秘密にしておきますがな」と恩着せがましく囁き、室内へと案内してくれた。

 その時、下駄箱の上にあるはずの道具箱はもうどこかへ片付けられてしまっていた。
 そしてリビングには、1メートル角の大きなキャンバスが十枚ほど新たに置かれていた。
 霧沢はその時、「宙さんは紫陽花を描くと話していたのに、なぜこんな大きなキャンバスがいるのだろう」と首を傾げた。そして、その時管理人は話してくれた。
「警察からこそっと聞いた話しなんですが、事故前の夜に、仏様と奥様がここで食事しゃはったらしいですわ。それが終わって、その夜の十時頃ですわ、滝川さんがそのキャンバスを届けに来やはったらしいでっせ」と。
 そして管理人は最後に言い捨てた。
「どっちにしろでっせ、仏はんは密室で亡くならはったんやし、それに、みんな真夜中の二時三時には、完璧なアリバイがありまんがな、そうでっしゃろ」と。
 まさにその通りだった。

 密室と完璧なアリバイ、警察はこの二点が決め手となり事故死と結論付けた。
 だが霧沢は、こんな状況証拠を検証してきて、宙蔵は事故死ではなかったのではないかと疑った。
 そんな思いに至る一つは、宙蔵の死後、霧沢が洋子に呼び出された時に、洋子は「密室の出来事やったけど、多分、宙蔵さんは誰かに殺されたんよ。だってあの人、煙草は吸うけど、ベッドなんかで、一度も吸ったことなんかあらへんわ」と、無感情ではあったがそんなことを漏らしていた。

 霧沢はこのように過去のことを順番に振り返り、残念なことではあったが、宙蔵は妻の桜子に殺されたのだと仮定を置いてみた。