小さな物語
「探したんだよティエラー!」
先ほどまでライの座っていた場所に座りニコニコと笑っている少年。青髪に紫の瞳。黒縁の眼鏡をかけていて何となく頭が良さそうに見えるが、雰囲気がなんというか馬鹿だった。彼の名前はルベル・イーグニス。ただのティエラ大好き人間である。
そして一番端にあるベッドにはライと少年が座っていた。
黒髪にやる気の全く感じられない赤い瞳。全体的にだるーっとしている彼はヴィルヘルム・シュヴァルツ。ライの幼馴染だ。
「……ねぇ、ヴィル」
「あ?」
「あの二人、本当仲良いよなぁ」
「だな」
二人の視線の先にはティエラとルベル。
笑顔でティエラに引っ付いているルベルに引っ付かれてる本人は「何でくっついてくんの!?」と、もの凄く嫌そうな顔をして引き剥がそうとしている。
この光景を始めて見た人物は皆、どこをどうすれば仲良く見えるのか分からない。と言うが、ずっとこの光景を見てきたライとヴィルヘルム曰く。嫌がってるように見えるけど内心嬉しかったりしてるようにしか見えない。らしい。
「保健室に居たという事はあれだろう? 僕と愛を育みたいっていう……」
「そんな訳ないでしょ!? それなんて妄想!?」
「照れなくてもいいんだよ。さぁ! ベッドに行こうか!」
ひょい、とティエラを持ち上げてライ達のいるベッドの隣に向かうルベル。
そしてティエラをベッドに降ろせば自分はその上に跨り、顔と顔の距離を縮めていきついに二人の唇が____重ならなかった。
「ちょ……! ギブ……! ギブギブ!」
後ろからライがルベルが首を絞めたのだ。
ライの顔は無表情だった。恐ろしい。
ギリギリと首を絞めながら「ねぇ……ティエラから退く?」と聞けば、
「退くよ、退きます! 退かさせてください!」
と切羽つまったように答えるルベル。
その反応に満足したのかライは手を離す。
手を離されれルベルはすぐにティエラ上から退いてヴィルヘルムの所へ避難した。
「君の幼馴染相変わらず怖いんだけど!?」
「知らねぇよ。自業自得だろ馬鹿」
「大丈夫だったかー?」
「大丈夫じゃなかったけど、ありがとー。助かったよー!」
「そうかそうか、それは良かった。今度からはあいつになんかされそうになったら急所ければいいぞ」
「急所……? あぁ、了解です!」
ライとティエラはなにやら男が聞けば青ざめそうな会話をしていた。
____キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。
入学式が終わったようだ。