小さな物語
「ところで、ティエラは私になんの用があったの?」
机の上に並べてあった小説を適当に呼んでいたライは、そういえばとティエラを見た。
聞かれた本人は「え?」という顔をしたが少し考えるそぶりを見せた後、思い出したように手を叩いた。
「あー、あれね。用事は全然ないよー。ただルベル君から助けてーっていおうと思ってただけなんだよねー。来ちゃったから意味ないけど」
あははー、と笑うティエラに「あぁ、そうなの? ふーん」と返事をしながら読んでいた小説をぱたんと閉じて机の端に置けば、欠伸をしながらティエラの横に座り、
「ねぇ、そろそろ帰らない?」
と、眠そうにめを擦りながらいった。
「そうだねー。帰ろっかー」
「っつーか、なんで今まで此処に残ってたのか謎だよな」
「だね」
三人がそう答えればライが「じゃあ帰るってことでいいんだね?」と、ベッドの下から鞄を取り出した。
「……どっから出してんだよ」
「え? ベッドの下から」
そんなことも分からないの? 馬鹿なの? とヴィルヘルムを見るライ。
ヴィルヘルムは「違ぇよ!」と言うと
「なんでベッドの下から出してんだお前」
「なんでって言われてもなー……サボる時は基本的に此処だし」
説明できませーん、と言うライを見てため息をついた。
「あ、ライちゃん。私、鞄教室だから取りに行ってもいい?」
「いいよー」
「あ、僕も」
じゃあ行ってくるねー。と、ルベルと一緒に保健室を出て行ったティエラ。
保健室に残ったのはライとヴィルヘルム。
ライは隅のベッドに暇そうに寝転がるヴィルヘルムに
「そういや、ヴィル鞄は?」
と、不思議そうに首をかしげながら聞いた。
「あ? ……あぁ、俺今日持ってきてねぇよ。どうせ何も必要ねぇし、教科書だって置いてくし」
「ふーん……ねぇ」
「んだよ」
「二人が戻ってくるまで確実に三十分ぐらいかかるよね?」
「だな」
「だよねー。んじゃ私は一眠りさせてもらいますわー」
と、言うとすぐにベッドに寝転がって目を閉じた。
夢の世界旅立とうとした、その時、
「すみませーん」
がらっ、というドアの開く音と共に気を失ってる金髪の少年をおぶった茶髪の少年が入ってきた。
ライはむくっ、と起き上がるとめんどうさそうにベッドから降りて、
「はいはい、どうしましたかー……っと」
目を擦りながら少年達の前に出た。
何故ライが出るかといえば、彼女が保健委員長で、しかも「俺が居ない日は代わりよろしくなー」と、保健の教師に言われたからである。
はじめのうちは「めんどくさい」だの「代わりの教師呼べよ」など愚痴っていたが今は授業サボれる。やったねー。という感じで結構この日を楽しみにしていた。
もっとも、他の日もほとんど授業に出ていないのだが。
「えー……と、んで君等はどうしたのかな?」