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大雨の翌朝は晴れていた

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「東京のお蕎麦屋さんの白いお蕎麦と、全然違うね。感動しちゃった」
 結花は活き活きとした表情を見せて云った。
「蕎麦というもののイメージが変わったね。ああ、本当は自分が蕎麦好きだったんだって、気付かされたよ。いいところに連れて来てくれてありがとう」
 最後に笑顔になった羽柴も、目の色を変えている。実際のところ、東京で蕎麦屋に入ろうと思うことは希だった。ここでこの蕎麦を味わってみると、どうしてこういうものが世界中の食文化が集結しているといわれる東京にないのか、不思議だった。今や蕎麦粉も殆どが輸入品だという、以前どこかで耳にしたことのある情報は、やはり現実のことらしい。
「何よ、それ。わたしがここの常連みたいなこと云って」
 しかし、結花は笑顔のままだった。羽柴は気になるあの男が、肩を並べている若い女性と愉しそうに話しているのを見ると、自分が意識過剰だったのかも知れないと反省した。



 細くて急な登りの道の両側は、断崖と呼んでもおかしくない急斜面である。つまり、その道は尾根の上を行く山岳道路だった。車体の幅と舗装の幅がほぼ同じ狭い道から踏み外せば、遥かに下まで続く急斜面を、車は転がり落ちて行くに違いない。そのような危険な道だというのにガードレールもないとは、信じがたいことだった。