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大雨の翌朝は晴れていた

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 再び青空が広がり、初夏の陽射しが戻った。道路脇のダケカンバの幹が眩しい。その奥に耕作地などの広大な緑の風景が輝いている。ところどころに集落らしい塊も見える。遥かに遠く、蒼い山並みが長く連なって見え、その上には夏雲が眩しい。
 下る一方だと思っていた道が、カーブしながら登り始めた。暫く車を走らせると、木立に囲まれているなだらかな草原が眼前に拡がった。そこにレジャーシートを敷き、二人は横になった。そこで本格的に昼寝をすることにしたのである。
 そこはその決定に最も相応しい場所だった。蜂の羽音が時折通過する以外に、野鳥の声もなく、絶好のスポットだった。
「静かでいいねぇ。風は爽やかだし、これ以上の快適さはないね」
 羽柴がそう云うと、
「しあわせ?」
 羽柴の左腕を抱きかかえるようにして結花が訊いた。
「結花も?」
 その返事が聞こえる前にまた、羽柴の意識は睡魔に呑みこまれて行った。
 


 白いミニスカートの結花と、若い男が抱き合うようにして歩いている。そこはラブホテル街らしい。鮮やかなネオンサインに囲まれた中を歩いている二人を羽柴は物陰から見張っている。勤め先の同僚からの警告は、本当だったのだ。二人が路上キスをしているのを見ると、羽柴は我慢できなくなって飛びだして行った。彼は刃物を持っている。その刃先を、若い男の背に突き刺した。ところが、刃物はなぜか結花の脇腹を刺してしまった。白かったスカートを血の色に染められた結花は、アスファルトの上に倒れた。それを見た羽柴は、驚きと恐怖のために叫んだ。茫然と立ち尽くす男は、おかしなことに羽柴の勤め先の同僚である高木だった。そのことにも羽柴は驚いていた。