大雨の翌朝は晴れていた
「どうしたの?凄い大声だったわ!」
半身を起した結花は彼の左腕を掴んでいる。
「……怖い夢をまた見たよ」
羽柴の顔は蒼白だった。それが次第に紅潮し始めた。
「……」
「ひどい夢だった。結花があの蕎麦屋に居た男と……」
「そんな夢を見たの?」
結花の顔は怒りに燃えている。
「高木から聞いたんだよ。結花が元カレと密会してるって」
「出鱈目よ!そんな話、信用したの?」
高木は羽柴と同じ高校の出身だった。高木の妹と、結花とは高校の同級生だった。
「最近、結花は冷たい感じだっただろう。だから」
「ひどいよそんなの。どっちが冷たかったのよ!」
泣き顔の結花は立ち上がると全力で木立に向かって走り出した。羽柴は呆気に取られて彼女を見送るばかりだった。
続く
作品名:大雨の翌朝は晴れていた 作家名:マナーモード