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宇宙迷宮都市

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ミトゥがいるのはシティの中央公園。
ストーンヘンジ。地球でそう呼ばれている巨石の祭壇だった。真ん中に石仏?
それは五体のモアイの原型だった。
モアイは何も云わない、悟りきっているかのように。ミトゥはふっと息を吐き
モアイから目を離した。モアイから憐れみを受けるのは嫌だ、
モアイが殺人マシーンの生き方に同情したり嫌悪したりするはずがない。
もし、そう感じたとすればそれはサイアスのテレパスのせいだ。ミトゥは決して
自分を憐れみはしない。全てサイアスの計算に違いない。惑わされてはいけない。
突如、うっそうとした森のイメージが送られてきた。密林?池の中洲に深い森が
姿を現した。サイアスはあの場所を闘いのステージと決めたのに違いない。
ミトゥは浅い青いモザイクの池の底に足を入れた。と、同時にパイラーの
レーザーサイトのスウィッチをオン。一条の赤い糸が森の中に吸い込まれていった。

サイアスはタイミングを計っているに違いない、仕掛けてくる瞬間を。我慢比べだ。
足を止める。森の中に遺跡?惑星の光が漏れている。
石造りの寺院だった。これも地球でパンテアイ、スレイと呼ばれている遺跡の
原型だった。星の光を浴びて白く輝いている。美しかった。静かだった。
その静けさでミトゥは我に返った。その時、寺院の上で何かが動くのを感じた。
「出て来い、サイアス!」
テバダーが笑い声を発した。いや、石の女神が笑うはずがない。それはサイアスの
ものだった。しかし姿は見えない。
サイアスはすでにミトゥの脳に侵入していた。
「私は君を殺しはしない」
「生きたまま捕らえるつもりね、ごめんだわ」
「私は君の殺人回路を破壊する、君は罪を許される」
「冗談じゃないわ、私の肉体は私のものよ」
「君は自分の失った物を知らないのだね」
「それがどうした」
「なんてことだ、君は母親ですら殺せるのか」
サイアスはミトゥの精神波の方向を探っていた・前頭葉に0.5ミリほどの大きさの
殺人回路を見つけた。シナプスと連動するシステム。位置さえ分ればいいのだ。

ミトゥは自分の奥から何かが出て行くのを感じた。光の中へ。
この時を待つていたのだ。
「もらった、サイアス!」
パイラーのトリガーを絞った、。目に見えない渦動波が密林の中へ吸い込まれていった。その時だった、強烈なテレパスが脳天を破る勢いで貫いていった。
どれだけ時間が過ぎたのか・・・
「ミトゥ、ミトゥ・・・」
ぼんやりとした頭の中で自分を呼ぶ声が聞こえる。
「私は・・・」
自分の頬に何か、
「水?」
「それは君が失っていたもの、殺人回路は破壊した。これで君は人間に戻れる、
女に戻れる」
「サイアス、あなたは何者?あなたは人間なのか・・・」
「私は何者でもない、しいて云えば浮遊生命体」

作品名:宇宙迷宮都市 作家名:mito