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宇宙迷宮都市

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<三姉妹戦闘ユニット>

 魔王帝国には7つの軍団からなる総勢66万の軍隊があった。
その全ては若き帝王ギャラの指揮下にあったがそれとは別に
ギャラの母リリスが直接指揮する独立した特殊部隊があった。
隊は6つの専門部局で構成されユニットと呼ばれている。
それぞれのユニットが少数精鋭の女兵で組織され単独で、またある時は
連係してリリスの作戦を着実に遂行した。ユニットの行動は神出鬼没で
実態を知るのは帝国の中でも限られていた。
その中の戦闘ユニットの一つの小隊の隊長がミトゥである。
数ある戦闘ユニットの中でミトゥ率いる三姉妹の部下だけの、抜群のチームプレイで
多くの武勲を挙げている小ユニットであった。

 リリスは苛立っていた。
もうとっくにミトゥからシティ制圧の報告があってもよいはずなのに未だにないのは
何故だ。ミトゥに何か異変が?そんなはずはない、今までにも確実に作戦をこなして
きた最も信頼出来る兵士だった。もう少し待ってみよう。

 アンナは青い星カリトを仰いだ。男達がカリトの化身と噂をする美貌の兵士だった。
シールド加工された黒いバトルスーツの胸元にはベルトで固定した至近距離用
バイパーシャワーガンがあった。中央公園の池に二つの影を落してマリアとセシルが
立っている。マリアは背中に2連の対空対地両用ミサイルを装着した小型軽量の
ランチャーを背負いセシルは戦車をも貫くという中性子ビームガンを肩から吊るして
いた。そして手にはそれぞれ熱線銃があった。
三人は視線を交わしたが言葉は発しなかった。何も云わずともお互いの意思は通じる
のだ。魔王帝国の中で陰で冷血人形の三姉妹と呼ばれている戦闘ユニットだ。
ここでミトゥと落ち合う筈であったがその姿が見えない。アンナは指と目線で双子の
妹達に付近の捜索を命じた。言葉は無用であった。
彫りの深い顔に赤いバンダナのよく似合うマリアがモアイの陰に隠れて見えなくなった。
まだ少女の面影を残したカモフラージュジャケットのセシルが赤外線ゴーグルで顔を
隠し池の中に入り中州へと向った。アンナはシャワーガンと熱線銃を構えてセシルの
援護をしながら周囲の警戒を怠らなかった。静かだ、今は音楽もネオンも照明も消え
人工の瀧の音だけが単調に聞こえるだけだった。

 ピピッと耳管ホーンの呼び出し音が鳴り同時にセシルの低い声が聞こえた。
「隊長を発見!付近に異常なし」
アンナはマリアに戻るように指示を出すと自走照明弾を10分にセットして森の上に
打ち上げた。50メートルの上空で照明弾が円を描いて回り始めたちまち森が真昼の
ように姿を現した。アンナとマリアは熱線銃を構え背中合わせにゆっくりと池の中を
歩いて行く。180度防御の体勢だ。ここは敵地であり戦場なのだ。どのような事態
にも対応できる歴戦の兵士だった。

 ミトゥはテバダーの足元にパイラーを抱いて座っていた。
「隊長、どうかしましたか?」
アンナは周囲を見渡しながらミトゥに声をかけた。
「いや、なんでもない。ここいらに人の気配を感じたのだが間違いだったようだ」
「ではリリス様に報告を・・・」
と、言いかけて言葉を閉ざした。丁度その時自走照明弾がブーメランのように戻って
きて灯りが落ちたのだがアンナは一瞬ミトゥの頬に涙の跡らしい筋を見たような気が
したのだ。まさか、ミトゥが涙を流すなど信じられない事だった。きっと光の反射に
違いない、アンナは自分にそう言い聞かせた。



作品名:宇宙迷宮都市 作家名:mito