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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 3 蒼雷

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 ユリウスが自室で軍略書を読んでいると、控えめなノックの後、ユリウスの返事も待たずにリュリュが部屋の中に入ってきた。
 ユリウスは、視線だけ向けて来訪者がリュリュであることを確認すると、すぐに視線を軍略書へと戻して、口を開いた。
「どうしたんだ、リュリュ。確か今は軍議中だったろう。」
「いや、それはもう済んだのじゃ。予定より早く済んだから、その・・・少しお主と話でもしようかと思うてな。勉強の邪魔じゃったか?」
「いいよ。勉強ばかりじゃなく、息抜きもしなさいって言われてるし。」
 そう言ってユリウスは軍略書を閉じると、長椅子へと移動した。リュリュも何も言わずにその対面に座る。
「で、話ってなんだい?」
「は・・・いやその。ここの所あまり話をしてなかったから、最近お主はどうしておるのかと思ってな。」
「いや、特にはどうもしてないと思うけど。」
「どうもしていないということはなかろう。アリスから教えを受けたとはいえ、御前試合の軍略の部で優勝までしたのじゃからな。てっきりお主は自慢をしてくるものだと思っていたのじゃが、あまり鼻にかけておる様子もないし、少々お主らしくないような気がしてのう。」
「ああ・・・あれは、まぐれで優勝したっていう部分もあるからな。まだまだ僕には知識も経験も足りないし、自慢できるような結果じゃないよ。僕は戦いに向いていないから今までは姉さんの後ろに隠れているだけだったけど、これからは違う。やっぱり前線で戦うことはできなさそうだけど、これからは知識でみんなの力になることができるかもしれないんだ。そう考えたら、ちょっといい成績を残したからってそんなことで慢心していてはいけないと思ってね。」
 そう言って笑うユリウスの表情には、余裕すら浮かんでいるように感じられ、リュリュは少し面白くない物を感じて頬をふくらませた。
「つまらんのう。張り合いがないのう。お主がもう少し天狗にでもなってくれておれば、その鼻をへし折って楽しめたというのに。」
「ははは、僕にはもうそんなことしている暇はないんだよ。少しでも多く知識をつけて、一日も早くリシエールを取り戻すんだ。そして・・・。」
 そこで言葉を切って、ユリウスは表情を緩めて、頬を染めた。
「なんじゃ。取り戻してどうするのじゃ?まさかグランボルカに攻めてくるつもりではあるまいな。」
「するわけ無いだろ。今更そんなことする意味もないし。というか、君やアレクシス殿下と一緒に過ごしたおかげか、グランボルカへの恨みや憎しみはもうそれほどでもないんだ。僕がしたいのは・・・その・・・結婚。だよ。」
「な、何を言うておるのじゃ、け、結婚じゃと?リュ、リュリュはそんなつもり、いや、お主がどうしてもというのなら考えんでもないが・・・あ、あと五年は待て。そうすればなんとか・・・。」
「なんで僕が君と結婚するんだよ。」
「は?」
「僕が妻に迎えたいと思っているのは、その・・・アリスの事なんだけど。」
 照れくさそうに頬を染め、視線を泳がせながらユリウスがつぶやいた。
「あ、アリス?」
「ああ。色々教えてもらっているうちに、彼女のことを本気で好きになってしまってさ。頑張って彼女に釣り合う男になろうと思ったんだ。・・・正直、この間の御前試合の時だって、彼女にふさわしい男なら、優勝くらいしないといけないと思って勉強したら、思いの他はかどってね。」
「ふ・・・ふうん、そうかアリスか。なるほどのう。べ、別にいいのではないかのう。」 ユリウスの話に、少し面白くなさそうな表情を浮かべながらリュリュが言うが、それを聞いたユリウスは、リュリュの微妙な表情には気づかずに喜色満面で身を乗り出した。
「そ、そうかな?いいかな?僕なんかで大丈夫かな。」
 嬉しそうにはにかむユリウスの表情を見て、リュリュの心には、面白くないものがこみ上げてきた。しかしリュリュはそのこみ上げてきたものを吐き出しそうになるのを必死に抑えて、代わりの言葉を吐き出す。
「大丈夫じゃろう。お主のように、脆弱な男にはアリスのように強い女がお似合いじゃ。せいぜい、捨てられないように気をつけて、しっかりと尻にしかれることじゃな。まあ、お主は尻にしかれることには定評があるから心配はいらぬ。」
「そっか、大丈夫か。ありがとうリュリュ。お陰でまた頑張る元気が湧いてきたよ。」
 リュリュの皮肉にも反応せず、晴れやかな表情を浮かべるユリウスを見て、リュリュは先程かろうじて抑えこんだ言葉を、ついに抑えきれずに吐き出してしまった。
「じゃが・・・・・・アリスは、裏切り者かもしれんがのう。」
「リュリュ・・・?」
「いや、兄様がそう読んだのなら、おそらくアリスは裏切り者で間違いはないのじゃろうがな。」
「・・・・・・リュリュ、どうしたんだ?君らしくないぞ。君は僕には嫌味を言うけど、アリスに対してそんなことをいう子じゃないだろう。大体君は前に、アリスは命の恩人で、とても信頼しているといっていたじゃないか。」
「・・・んわ」
 ユリウスに肩を掴まれて、リュリュは顔をそむけるように俯き、つぶやいた。
「え?なんだって?」
 リュリュのつぶやきがよく聞き取れなかったユリウスは、少し屈んでリュリュの口元に耳を寄せて尋ねる。
「知らんわそんなこと!自分でも意味がわからんわ!リュリュは別にアリスの事を悪く言うつもりなどなかったというのに、全て・・・全て貴様のせいじゃ、このヘタレユリウス!」
 そう叫ぶと、リュリュは部屋を飛び出していった。