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朝木いろは
朝木いろは
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>

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一ノ瀬未咲に出会ってから、俺の行動は少しずつ変わっていった。最近の一番大きな変化は、あれほど面倒臭いと思っていたオフ会に出席する決意をしたことだろう。昨夜白崎から電話があり、「絶対に来てよね。新メンバーも紹介したいし」とプッシュされ、俺はNoと言えなくなった。以前なら無言で電話を切るか、最初から着信自体を無視していたはずなのだが。
 所沢駅から歩いて十数分の場所に「黒猫モジャカフェ」はあった。看板が表通りに出ていないので、裏路地に入らないとたどり着くことはできない。こんな不便な場所なのによく潰れないなと思った。カフェの入り口にかかったすすけた木の小さな看板には「黒猫モジャカフェ」という手彫りの文字と、ネコらしき絵が添えてあった。手で押してドアを開けると、 チリンチリンと鈴の甲高い音が中に鳴り響いた。店内は広くない。手狭なカウンター席、二人掛けのテーブル席がふたつ、そして四人掛けのテーブル席がひとつ。カウンター席に常連らしき初老の男が一人座り、文庫本を読みながらコーヒーを飲んでいた。約束の時間より五分ほど早く着いたせいか、まだ誰も来ていない。俺は四人掛けのテーブル席に腰を掛けた。