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門之倉 樟
門之倉 樟
novelistID. 45405
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二人の軌跡

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「Σ(シグマ)1ならびにΖ(ゼータ)1、テスト開始ポイントへ向けて出撃してください」
 そして最後、ディノウだけの秘匿回線にして最後「今日も頑張ってくださいね。アサト中尉」とエールを送ってきた。彼女と初めて会った日から、ずっと続いている。最初のころは司令も、やめろと口を出していたが、今ではそれも無駄だと分かり、やめたようだ。
 またあの日以降、アサトが行う基礎体力訓練を彼女は一緒にやっていた。さすがにパイロットの走り込みは、彼女は堪えるようで後半はバテバテだ。初めてやったとき彼女はポツリと、足が太くなりそう、と零した。
 それを聞いたアサトは声を上げて笑い、彼女は必死に顔を真っ赤に染めながら聞かなかったことにしてと言っていたのは、いい思い出だ。
 ディノウが最初に格納庫から発進し、数秒後ヴィンティウも同じように発進。そして目標ポイントへ到着した。もちろん、戦闘機の状態である。そして、アンナのテスト開始の宣言で、このテストが幕を開けた。
 合図と同時に両機は全速力で目標の敵へ向かう。両機共に、最新の耐G装置が存在するが、最大速度を出したときに掛かるGは、現行機の最大速度で受けるGよりも大きい。アサトは、このディノウに掛かるGを最初に体感したときはその痛みに必死に耐えていた。が、今では、この痛みに慣れ、自分が高速で空を飛んでいることを実感でき、良いと感じている。
 両機ともに、同じ速度を出している。しかし、ディノウは現在の主流の技術を集約させたもので、ギリギリの性能で出している。一方、対抗機のヴィンティウは最先端の技術を惜しみなく使っていて、理論上からもディノウよりか楽に出している。現状は他の物理的問題でこれ以上は出せないが、今後の発展性がある。
 故に、コスト面と整備のしやすさは圧倒的にディノウの方が上だが、機体自身の安定性はヴィンティウに分がある。受けるGに関しても、ヴィンティウの方が小さい。
 アサトはGに耐えながら、レーダーと経過時間、正面に定期的に視線を移す。何度目かのレーダーを見ると、目標のオンザ――この間まで、三年間搭乗していた機体――の一個小隊を補足していた。
 アサトは思考する。この機体が捉えたということは、より最新技術を積んである、カルト機も敵機を捉えていることになる。このまま、奴と一緒に戦うか、それとも別の小隊を見つけることにするか。しばし、逡巡する。そして、カルトと一緒に戦闘することにした。
(テメェがあれから、どれだけの腕をつけたか、見せさせて貰うぜ!)
 相手の機体が肉眼でも捉える。それぞれの機体が、これより直進機動から戦闘機動へと移行する。
 アサトは持ち前の運動性を用いて、敵機のガンポッドの射撃を巧みに回避して、相手の懐へと潜り込む。戦闘機から、人型へと変形し、ガンポッドを構え、発射する。相手はこれを避けきれず、機体の大部分を緑へと染めてゆく。
 その間も、レーダー等を駆使して、カルトの動きを常にチェックしていた。彼の動きは、以前ともに戦った動きだ。だが、より正確な行動、射撃をする腕は付いているが。そして、彼の機体が攻撃を示す、ピンクのペイントをつける。
 二人とも、一機撃墜して刹那、お互い人型形体でメインカメラを向ける。機体の顔が向きあい、お互い無言のまま。二人はお互い、口元から笑みがこぼれる。
(あの野郎、順当に力をつけやがって。やっぱ、こうでなくっちゃな。面白くなってきやがった!)
 アサトはライバルの成長を素直に喜んだ。ここ何年も出会っていなかった友の成長だからだ。あの事件からカルトがどう思っていようが、彼にとっては友人であり、競い合うライバルなのだ。
 それから彼らは、競い合うように敵機を撃墜していく。残り一機の敵に、二人で向かい、結果として同じぐらいの量の緑とピンクに機体が彩られた。
 そして、あっという間にテストが終了する。流石に二人が凄腕のパイロットに加えて、最新鋭機の性能のおかげで、圧倒的な強さを誇っていた。所々、機体にペイントが付着しているが、機体の破壊につながるほどの被弾ではない。
 オペレーターのテストが終了しました、基地へと戻ってください。と、いう言葉を聞いて、二人が戻ろうと機体の向きを変更し背後を向けた瞬間、突如として機体の警告音がコックピットに鳴り響く。それは自機がさっきの模擬戦で戦闘したエクスタート、オンザからだった。
 二人はすぐさま戦闘機動へと戻し、相手の射線軸からずれる。数コンマ後、そこにはガンポッドの実弾が空を切っていた。少しでも反応が遅れていたら、両機とも鉄屑の塊に早変わりしていた所だ。
 アサトは模擬戦の機体から実弾が発射されたことに驚いた。このテストの説明によると、実弾はどの機体にも装備されていないはずなのだ。そんなことはありえない。だが、現実には実弾は発射された。
 それに加えて、このテストでは他のパイロットが発砲してきたオンザに乗っている。なぜ、兵士が攻撃をしてきたのか、疑問が出てくる。
 アサトは反撃として、メインカメラに向けてペイント弾を発射した。パイロットが操縦しているため、カメラを潰せば数瞬は相手の動きを止められる。幸い、相手は人型の形態なので、メインカメラは顔になり当てやすい。
 カルトも同様に、メインカメラへ向けて攻撃する。数発当たるが、相手の動きは止まらず、むしろ敵対行動を取ったと判断したのか、激しくなった。
 そんななか突如、ディノウとヴィンティウ両機にHQから通信要請が出された。二人とも、即座に回線を繋げる。
「HQからΣ(シグマ)1ならびにΖ(ゼータ)1へ。現在交戦中のオンザは、こちらからの制御がきかず、恐らくは何者かにより手によりコントロールが奪取されていると考えられます。両機とも自機が撃墜されないことを第一に行動してください」
 アンナから現状を聞いている間にも敵機は攻撃をしてくる。両機ともに戦闘機形態で、高速で移動して攻撃を回避しつづける。
「また、司令から可能であれば、敵機の無力化をせよとのことです。最悪、撃墜しても構いません」
 アサトは彼女の言葉を聞いて、多少は動揺するが、すぐさまに冷静さを取り戻す。今は実弾がどういう経緯で装備されたか、どうやって制御を乗っ取ったかはどうでもいい。現状で集中するべきことは二つ、両機が撃墜されないことと相手のオンザの無力化だ。
 現状を整理するために、レーダーを横目で見る。他のオンザ二小隊が、自分たちを包囲するように動いていた。おそらく目の前と同様、実弾で武装されているだろう。
 アサトは相手のガンポッドを奪取するために、相手の攪乱させるように動く。ディノウの機動性も相まって、敵機は捉える事が出来ず、見事に翻弄されている。
 そしてタイミングを見計らって、一番近くに居るオンザへと急接近し、人型形態へと変形して相手のガンポッドを蹴って吹っ飛ばした。
 相手の手からガンポッドが離れて、それをアサトはすぐさま戦闘機形態へ再び変形し、機体の下の部分に収納された腕を伸ばしてキャッチする。
 人型形態へと戻って、先ほど手に入れたガンポッドで相手の急所を狙って機能を停止させる。相手は地上に不時着したが、幸い爆発する兆候はない。
作品名:二人の軌跡 作家名:門之倉 樟