戦国トリビアだったりジョークだったり
伝説③
あれは……もう何回目のことだか覚えてないんだけど、今日も今日とて、北条軍が懲りもせず沼田城に攻めてきた時のことだね。
YAZAWA様の命令で、俺は奴らが休んでいる場所を探りにいったのさ。斥候という仕事だね。
で、首尾よく発見した。俺はこれでも凄腕だからね。
俺は行商人に変装して、奴等の陣をじっくりと観察させていただいた。
その時、何を勘違いされたのか馬の目利きをしてほしいと言われた。行商人風情はこんな馬なんて見かけたことなんてなかろうって、鼻もちならない態度でさ。確かに金ピカの馬具をつけられた立派な馬だったよ。
俺、ここでちょっとひらめいちゃったね。
「あぁ、本当に素晴らしい馬です。後生です。どうかわたくしめに、この素晴らしい馬の乗り心地を味あわせていただけないでしょうか」
「ほほぉ、分かるか! いいだろう! でも暴れ馬だから殺されても文句は言うなよ!」
「ありがとうございます!」
俺はひらりと馬に飛びのったね。多分その場にいた全員が「あれ? こいつ行商人だよね?」って首をかしげたはずだ。その平和ボケした発想が、奴等が俺達に勝てない何よりの証拠だって言うのにねぇ。
「やあ、やあ、我こそは真田が家臣の──!」
ばっちり名乗らせてもらって、馬ももらってきちゃったよ。
いやあ、楽しかったなあ。
作品名:戦国トリビアだったりジョークだったり 作家名:小豆龍