レゾンデートル
はっと目を覚ましたユーリは、冷たい床に仰向けになっていた。空は満点の星が輝き、時々その星が流れるほど空気は澄んでいた。
「いったい何が起きたんだ。・・・それにここは?」
頭に手を当てたユーリは、あたり一面を見まわしたが、見慣れた街並みではない。たくさんの事件でいろいろな街に行ったことがあるが、今いる街は一度も見たことがない。
ユーリが今いるところは超高層マンションの屋上だった。下の様子を見るためにエレベーターで下に降りてみたが、『セントラルタウン』と同じ大都会であることには変わりないが、違和感がある。それは、静かすぎることと人の気配が全くしないこと。そして、明かりがどの家にもついてなく、街頭だけであるということ。
遠くの方から人の走る音と銃声が聞こえてきた。
━銃声!?
その音のする方へ走ってみること3分。そこには、目だけが覆っている仮面を付けたパーカーを着た男と黒いスーツとサングラスをかけた男が銃で撃ち合いをしているありえない光景があった。事を大きくしないため、二人の間に入ろうとした矢先、
「行ってはいけない。」
いつ背後を捕らえられたのか全く気がつかなかった。高くもなく低くもない冷静とした女性の声がしたと同時に、首元には短剣が握られ、今までにないくらいの恐怖心で体中の毛穴が一気に開いたような感じがした。
やがて短剣がはずされ、改めて背後の女性を見たが銃を撃ちあっている男と同じ薄いピンク色の仮面を付けている。エメラルドの瞳をし、長い金髪は赤いリボンで一つに束ねられ、黒いマントに身を包んでいる。
すると銃声と共に断末魔の叫びがした。振り返えれば撃たれたスーツ姿の男の体が閃光弾のような光を放ち、撃たれた男は消えてしまった。その光景を間近で見たユーリは言葉が出なかった。
「ミッション完了。」
「ミッション?」
なぜ?と頭がついていかなかった。
「着いてきて。」
「おいっ!さっきのは何だ!それにお前は・・・。」
「それは、どっちを答えればいいのかしら。現実世界と電脳世界。住む世界も違って、名前も違うのよ。」