ねとげ~たいむ
私達が森の最深部へやって来た。
目の前には大きく石を組みあげて作られた苔だらけの建造物があった。
「そう言えばさ、超兵器ってどんなのだろうね?」
レミが言って来た。
私達はあくまで『兵器』と呼ばれただけでどんなのか聞いてない…… と言うか説明されて無い。
するとエミルが言って来た。
「そりゃ国1つ吹き飛ばすんだったら、すごく大きな大砲だよ」
「そんな安直な……」
「じゃあ何があんのよ?」
「そうね、ここはやっぱり……」
レミは口ごもりながら固まった。
額からダラダラと汗を流しながら待つ事数秒、眉をヒクつかせ、目を反らしながら言って来た。
「か、核爆弾…… とか?」
私達の間に冷たい風が吹き抜けた。
レミは発想力と言うか想像力が無かった。
「……自分だって似たようなモンじゃん」
「古人曰く『同じ穴の狢』」
って言うかファンタジーに核爆弾は無いだろうに……
エミルとセンリは目を細めながらレミを見た。
レミは慌てふためきながら弁解する。
「わ、私だってあんまりこう言うの得意じゃないのよ…… コロナは分かる?」
「ええと、そうだなぁ……」
私は考えた。
このゲームのジャンルはファンタジーだ。
となると強力な魔力を持つ魔剣か人を怪物化させる魔法…… もしくは人工的に作られたモンスターと言う可能性もある。
「まぁ、あくまで可能性だけどね……」
「コロナサン、nice・imaginationでありんす!」
するとレイさんが私の両手をつかんで顔を近づけた。
「えっ? いや、このくらいなら慣れれば誰でも出来るよ」
「そうでもないよ、誰かさんみたいに核爆弾は無いでしょうけど…… ねっ?」
「アンタだって似たようなモンでしょ!」
「まぁまぁ、誰にでも苦手な物はあるから……」
私は怒るレミを宥めた。
何しろ以前この森(前半部分)でパーティが破綻しかけた事がある…… まぁ、あの時と比べてレミもエミルも成長したんだし、あの時みたいにはならないだろう…… 多分。
祠の中に入ると直ぐ下に降りる階段があった。
階段を降りると石の通路が広がっていた。
ダンジョン内はクラウド国王の言う通り、洞窟内をモンスターの大軍が現れて行く手を塞いだ。
影の中に潜み、背後から鋭い爪で人を襲うシャドウ・デーモン。
相手に姿どころか技や魔法までコピーして攻撃して来るドッぺルゲンガー。
黒い煙の様な体に上下に鋭い牙が生えた口のスモッグ・マウスなどが現れた。
勿論棲み付いて繁殖したモンスターだけじゃない、勿論侵入者用のトラップも健在だった。
「皆さん、ワチキの後を間違いなくlt・comes・withでありんす!」
私達はアナライズを使ったレイさんを先頭にして洞窟を進んで行った。
「ねぇねぇ、こっちはレイがいるけど、お姉さん達はどうしてるのかな?」
「え? そりゃセナさんがいるから…… あっ!」
私は思い出した。
セナさんは自分で仕掛けた罠にはまる程のドジっ子だ。
狩人も盗賊同様にトラップを見破る技を使えるけど、あの人の場合見つけたとしても引っ掛かる可能性がある。
「……宝の持ち腐れね」
「古人曰く『猫に小判』」
「センリサン、それはmistakeでありんす、beckon・catがいるでありんす」
「いや、それは良い伝えで猫に小判ってのはね……」
レミは説明する。
するとエミルが尋ねて来た。
「でも何で猫がお金呼ぶの? センリの言う通り意味無いじゃん」
「ああ、それはね……」
私もエミルに説明する。
招き猫の由来は幾つもある。
招き猫のモデルは三毛猫の雄と言われていて、三毛猫は遺伝子の理由から大半雌しか生まれて来ず、ごく稀に雄の三毛猫が生まれて来る事から珍重されて来た。
諸説の1つとして昔、貧しい生活で愛猫を手放さなきゃならなくなったお婆さんの枕元にその猫が出て来て『自分そっくりの人形を作ればを儲かる』と言われて、それを作った所たちまち評判になったと言う。
「ちなみに、右手を上げてるとお金を呼んで、左手を呼ぶと人を呼ぶって言われてるのよ」
「んじゃ両手を上げれば最強じゃん、猫飼おうかな〜?」
「いや、両手を上げるとお手上げって意味になるから…… 逆に縁起が悪いよ」
「って言うかエミル、犬派じゃなかった?」
センリは目を細めた。
私達はそんな話をしながら私達はとある部屋へやって来た。
そこは大きく作られた長方形のフロアで無数の柱が天井を支えていた。
そして私達の反対側にある壁にはさらに奥へ続く扉があり、その前には鎧と兜に身を包み、腰に剣を携えて武装した無数の男達が立っていた。
男達は私達に気付いて振り向くと腰の剣を引き抜いて切っ先を向けた。
『貴様達、何者だ?』
「アンタ達こそ何者よ?」
「どうせ悪大臣に手を貸してる反乱分子でしょう」
レミはホーリーメイスを肩に構えた。
戦闘に突入した私達に敵達の名前が表示された。
レミの言う通り、彼らは『反乱兵士』と名付けられていた。
「まんますぎるね」
「上等じゃ無い、やってやるわよ!」
エミルが両手の関節を鳴らした。
正直反乱兵士達は弱かった。
私やエミルやレイさんどころか、この中で1番力の弱いセンリも通常攻撃で倒す事ができた。
『くっ、くそぉ……』
『つ、強すぎる……』
「いや、アンタ達が弱いだけだし」
エミルは頭を描きながらため息を零した。
エミルの言う通り、正直今まで戦って来たモンスターの方が手ごたえがあった。
「んで、こいつらどうなるの?」
「さぁ、素通りで良いんじゃない?」
レミは両手を上げた。
『何事だ! 騒々しい』
すると反乱兵士達の後ろの扉が爆発した。
現れたのは2メートルを超える巨漢だった。
先端が尖ったナイトキャップの兜、全身合わせて100キロは超える両肩部分が反り上がった鎧を着込み、右手には巨大な斧、左手には棘の生えた丸い盾を装備した男だった。
明らかに扉の大きさよりこの男の体積の方が大きかった。
「あいつ、一体どうやって入ったの?」
「エミルサン、一々smallな事を気にしてたらbodyが持たないでありんすよ」
レイさんは言う。
反乱兵士は叫んだ。
『おお、ハウザー様!』
『来てくれたんですねっ!』
ハウザーと呼ばれた男は私達を見た。
『フン、王国に雇われたハイエナめ、このハウザー様が地獄に送ってくれるわ!』
ハウザーは巨大な斧を構えた。
「死亡フラグ立ちまくりの台詞を……」
「時代劇で見るでありんす」
レミとレイさんはため息を零した。
私達は得物を構え直して2回戦に突入した。