ねとげ~たいむ
私はパソコン画面を見続けた。
ずっとお姉ちゃんの言葉が頭に引っ掛かっていた。
『皆を見習えばもっと楽しくなれる』
そうかも知れなかった。
私は立ち上がると押入れを開けた。
中学生の頃に書いた小説を引っ張り出した。
それは私の友達と作った合作のファンタジー小説の設定ノートだった。
個性豊かな主人公が仲間達と冒険する物語。
物凄い偶然な事に、登場人物は戦士、武闘家、僧侶、魔道士…… しかも全て女の子だった。
その主人公である戦士の少女が書かれたページをめくるってそこに書かれている技の名前を見た。
そしてパソコンの前に座るとキャラクターの設定を開いて技の名前の変更モードを選択、キーボードを押して名前を変えた。
しかし見直す度に私はへこんだ。
別に恥じる事じゃないけど、人に見られたら私は迷わず2階から飛び降りるだろう、何しろエミルやショコラさんをバカにする事は出来ないほどのネーミングだったからだ。
さらに本棚から国語辞典と英語辞典を引っ張り出して試行錯誤で練り直した。
こんなに集中したのは久しぶりだった。
中学時代、あの子が転校して才能が無いと諦めるまでは皆で楽しく考えて書いていた時の事を思い出した。
気が付いた時には空が明るくなっていた。
「よし」
結局徹夜しちゃった。
夏休みで本当に良かった。
私は深く息を吐きながら背にもたれた。
そして頬を緩めると新しく設定の変更された戦士コロナを見た。
「これからよろしくね」
私は画面の中のもう1人の私に言った。