ねとげ~たいむ
どうやら私は勘違いをしていた。
レイさんがどうして闇属性の武器だけでランク9まで来れたのかようやく分かった。
武器によって属性が変わるのはあくまで物理攻撃での話し…… いくら装備を変えた所で技の属性まで変わる訳じゃない。
恐らくレイさんは複数の属性付きの技を持っていて、それを使ってランク9まで登りつめた。
ただ誤解しちゃいけないのが『火遁の術』とは火薬を爆発させて煙を起こし、その隙に逃げ出すと言う物で、間違っても相手にダイナマイトを投げつけて爆死させたり、魔法使いみたいに炎を出して攻撃する技じゃ無い。
分身の術にしても同じ服を着て顔を隠した忍者が複数いて、それが入れ替わり立ち替わりするのを見せつけて相手を撹乱させると言う物だ。間違ってもマンガみたいに加速による残像とか魔力を練って作り上げた分身とかじゃない。
「まだまだ行くでありんすっ!」
レイさんはさらに火遁の術を使った。
さらにキング・スケルトンの体はたちまち大爆発、骨の鎧は殆どなくなった。
レイさんが戦ってくれている間、私達は突撃の準備を進めていた。
「お姉さま、援護しますわ!」
サリアさんは一緒に戦う事を止めて私に戦の舞を踊ってくれた。
私にもお姉ちゃんと同じく頭の上に攻撃力アップの印が浮かび上がった。
でもそれで終わりじゃ無い。
「「渾身っ!」」
私達は渾身でさらに攻撃力を上げた。
私達の準備はこれで完了、私達は白く鈍い光沢を放つ刃をキング・スケルトンに向けた。
「これでfinishでありんすっ!」
最後の飛び苦無が放たれて大爆発、骨の鎧は完全に砕けてポルター・ガイストが現れた。
ほおっておけば再び復元する、でもそれを黙って見ている私達じゃ無い。
「グラビティ・バインドっ!」
センリが拘束魔法を放った。
床に少しだけ浮かんでいるポルター・ガイストの真下に紫の魔法陣が灯ると大地の鎖が現れて敵モンスターを拘束した。
これでしばらくは動けない、チャンスは今だ!
「「はああああああっ!」」
私とお姉ちゃんは敵に突進した。
そして技コマンドを選択すると両足を揃えてジャンプすると2つの刀身に炎と冷気が集まった。
「「気合い斬りっ!」」
2つの刃が同時にポルター・ガイストを×印に切り裂いた。
『ギャアアアァァアア―――――ッ!』
ポルター・ガイストは断末魔を上げながら消滅した。
これにてクエスト終了だった。
街に戻ってきた私達は報酬を受け取った。
そして改めてレイさんのステータスを見せて貰った。
全て英語に直してあるが基本的な属性付きの攻撃技は殆どマスターしていた。
エミルと言いショコラさんと言い、名前付けるの流行ってるのかな?
「趣味もここまで来ると凄いわね」
「古人曰く『芸は身を助く』、気まぐれで始めた事が時に役に立つ事もある」
センリは言った。
確かにそんな話はよく聞く。
会社が倒産した人間が趣味で覚えていたラーメン作りを生かしてラーメン屋になって成功したり、絵の才能が元々あった人間が脱サラしてマンガ家になって大ヒットを飛ばした例もある。
「それで、ワチキはどうでありんしたか? お役に立てましたか?」
レイさんは尋ねて来た。
「ええ、凄く助かった。正直レイさんがいなかったらきつかったわ」
「私も…… サリアは?」
「そうですわね、認めざるおえませんわ」
サリアさんは腕を組みながら素っ気なく答えた。
私もそう思う、レベルも実力も申し分ない、これで10人揃って特別クエストへの準備が整った。
夜も遅いと言う事で私達は解散となった。
センリ、サリアさん、レイさんはログアウトして電脳世界から姿を消した。
私もログアウトしてシャワーを浴びて寝ようと思った瞬間だった。
「アンタの友達って凄いね」
突然お姉ちゃんが言って来た。
「何よ突然?」
「いや、ホントにみんな凄い人達だなって思ってさ…… 皆凄い特技持ってるじゃない?」
「まぁ、確かにね」
私は目を背けた。
全員が全員と言う訳じゃないけど、みんな自分が持てる物を生かしている。
「少しばかり見習う?」
「えっ?」
私は想像する。
私が技を放つ時に特撮ヒーローみたいに叫んだり、中二病みたいなネーミングで攻撃する…… 正直言って恥ずかし過ぎる。
「お姉ちゃん、まさか……」
「ああ、違う違う、何だか皆ゲーム楽しんでると思ってさ、見習ったら私達ももう少し楽しくなるかなかってさ」
お姉ちゃんは苦笑した。
「さてと、じゃあ私も寝るね」
そう言うとお姉ちゃんはログアウトした。