ねとげ~たいむ
クエスト11,10人目の仲間
レミから知らせを受けた私達はクエスト受注所へ向かった。
クエスト受注所の入り口に1人のアバターが立っていた。
黒髪の短いポニーテール、動きやすい鎖帷子の上から黒いミニスカートの忍装束を羽織り、上半身には黒いマフラーと白い縁取りの黒い鱗の胸当て、両手足にも無数の鱗が取り付けられたグローブとブーツを履いていた。
彼女が私達の仲間の仲間入りをしたいと言う『レイ』さんだった。
「この子よ…… まぁ、ちょっと困った事があるんだけどね」
レミは苦笑する。
私を含めた皆は顔を見合わせるが、何の事だか分からなかった。
その訳は直ぐに分かった。
「hellо、nice to meet you」
彼女の言葉に皆が固まった。
笑顔で話して来たレイさんは首を傾げた。
するとエミルが震えながら指を差して来た。
「え、英語? って事は外国人っ?」
「う、うろたえるな愚か者、異国の者を目の前にして慌てふためくとは…… 貴様もまだまだ修行が足りんな」
「姉さん、声が震えてるよ」
ホイップ君は目を細めた。
そう言えばこの人、英語の成績すこぶる悪いって言ってたな。
とは言え私も人の事は言えない、私も英語と数学は自信が無いからだ。
他にも進学校に通っているセナさんも英語は苦手らしく、サリアさんも全くできないらしい。
私はセンリに訪ねてみた。
(センリ、英語できる?)
「古人曰く『蛞蝓に塩』」
要するにダメって事ね。
このことわざはナメクジに塩を駆けると縮んでしまうように、苦手な事が目の前にあると動けなくなってしまうと言う意味だ。一応会話は出来るみたいだけど……
困っているとレミが咳払いをしながら右手を差し出した。
「you too,welcome to my partr」
「thank you!」
2人は笑顔で握手をした。
「えっ、レミ?」
「アンタ、英語喋れんの?」
「何よ、人を珍獣みたいに…… 海外とか良く行くから日常会話くらい出来るわよ」
驚くエミルにレミは顔を顰めた。
そう言えば夏休みに旅行に行ったって言ってたな。
「でも困ったね、念願の盗賊だってのに…… 全く日本語話せないの?」
お姉ちゃんが尋ねて来る。
お姉ちゃんは英語の成績は大丈夫だ。
一応会話はテキストなので会話が出来ない訳じゃない、だけど実際に海外の人と話すのは初めてなので自信が無いんだろう。
レミはその事をレイさんに聞いてみた。
「一応喋れる事は喋れるって、ただ実際通じるかどうか分からないから英語だったみたいよ」
「何だ。良かった〜」
「別に、少しくらい変でも構いませんわよ」
セナさんは安心し、サリアさんは両手を上げた。
まぁ確かに、このパーティでまともってのが少ない、多少変だからって別に笑う人はいない…… と思う。
するとレイさんは腰を低くして左を後ろに回して右手を返して前に差し出した。
「御控なすってぇ! ワチキはアメリカから参りやしたぁ、レイって言うケチなヤローでェござんすっ! イゴお見知り置きを!」
「「「「「「「「「は?」」」」」」」」
皆固まった。
目の前にいる子はこのメンバーの中で誰よりも変わっていた。
彼女はお父さんの仕事の都合で生まれた頃からアメリカにいて、日本の事を知らなかったと言う。
高校入学と同時に日本にやって来て栃木の学校に編入したと言う。
「にしても、どこで日本語ならったのよ?」
「それはワチキのhArtの師匠、倉橋・秀雄様や竹林広之様達から教えて貰ったでありんす」
「誰それ?」
「時代劇役者よ…… 確か『十六夜の梟』と『常夜の仕置人』の人でしょう」
「よく知ってるね、特撮オタクのクセに」
「アンタに言われたくないわよ、時代劇は親父が好きなだけよ」
お父さんの事を親父って言ってるんだ。
時代劇の事はあまり分からない、だけどレイさんは時代劇などを見て日本語を覚えたらしい、かな〜り違ってるけど……
「時代劇より特撮の方が良いよ〜、こっちの方がカッコ良いモン」
「愚か者め、アメリカで育ったならアニメの方が良いに決まっている、日本はアニメの国だ!」
「姉さん達も日本勘違いしてるよ」
ホイップ君は言う。
日本のアニメは世界中で人気だけど、元々アメリカの物なはず、それを日本の漫画家さん達が有名にしちゃったって聞いたけど……
「でも好きな物は人それぞれ何だから」
「それはそうと、親睦深める為にクエストにいかない? もう1回くらいなら行けるでしょう?」
「レイさん、これから行ける?」
「Don,t worry、大丈夫でありんす!」
レイさんは自分の胸に手を当てた。
発音は完璧なのに、時代錯誤の言葉使いの責で怪しい外国人になっていた。