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ねとげ~たいむ

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クエスト10,2人の戦士



 宮崎・蒼……
 それが私の姉の名前だった。
 私と同じ私立風鈴高校に通う1つ上の高校2年生、ただ頭に『超』が千個付くくらいの怠けものだった。
 私の家はお父さんとお母さんが良く出かけるので家事は両立する約束だった。
 しかしお姉ちゃんは全く守らず、洗濯も掃除も私に押しつけ、なお且つ食事は出前(しかも注文するのまで私)になっていた。
 この世に神様ってのがいるならぜひともパソコンで『不公平』と言う言葉をググって貰いたい。
 何しろこの姉は普段はこんなだけど、学校では成績優秀・スポーツ万能・おまけに面倒見が良く教師からの信頼も厚い完璧超人だったからだ。
 私は確かにお姉ちゃんは嫌いじゃないし、どっちかと言うと尊敬している方だ。だけどもう少し妹を大事にして欲しいと言うか、女の子らしくして欲しいと思っていた。
 そうでなきゃ将来お嫁に行った時の事が気が気でならない、不幸になるのが目に見えている…… 勿論旦那の方がだ。

 私はお姉ちゃんと話して皆に紹介する事にした。
 部屋に戻ってゲームを再開し、お姉ちゃん(アバター)が待っている場所へ皆を連れて行った。
 そこはクエスト受注所だった。
 そこで待っていたのは私と双子かと見間違うほどそっくりのキャラだった。
「コ、コロナが2人っ?」
「うわぁ、分身の術ですぅ!」
 エミルとセナさんは驚いた。だからアバターだって言ってるのに……
 しかし驚いているのは2人だけじゃ無かった。その場にいる者達も私とお姉ちゃんの顔を交互に見ていた。
 ちなみに正確に言うと私(コロナ)が2人いるんじゃなく、お姉ちゃんが2人いると言った方が正しかった。
 このゲームをプレイする時にどんなアバターにして良いか分からず、とりあえずお姉ちゃんのアバターを真似たと言う訳だった。

 私達はプレイヤーズ・バーへとやって来た。
 そこで改めて自己紹介をする事になった。
「もう分かってると思いますけど、彼女は私の姉、ハンドルネーム『ルナ』さんです」
「はじめまして」
 お姉ちゃんはにっこりと笑った。
 続いて他の人達も自己紹介をする。
 男が1人しかいないけど、まるでちょっとした合コンだった。
「でも皆ランク9なんですね、ボクと姉さんも昨日なったばかりなんです」
「クククク、闇と光が手を取れば成せぬ事は無い、このまま神の位まで上り詰めてみせる」
「お姉さまと一緒にマスター・ランクに行くのは私ですわ!」
「わぁ〜、皆さん凄いですねぇ、私なんていつマスター・ランクになれる事か〜」
「それでも1人でここまで来れたんだから十分凄いですよ」
 私が言うとお姉ちゃんが笑いだした。
「コロナって随分仲の友達が増えたのね、貴方って人見知り激しいから……」
「いや、お姉ちゃんがほったらかしだったでしょう」
 その為にもう追いついた。
 見た所戦士でクラス・チェンジもしていない、ただの戦士のままだ。
「でもルナ…… だっけ? 良い装備してるわね」
「ああ、割に良クエストいくつかやってましたから、それに友達もいましたし」
「友達? 今いないの?」
「皆帰省やらバイトやらで忙しくて、夏休みの間は来れないわよ」
 そう言えばお姉ちゃんにも仲間がいるって言ってたな、あった事無いけど……
「お姉さんの仲間って何人いるの?」
「4人よ。武闘家、僧侶、魔道士、盗賊…… みんな私と同じ高校生」
「あら、私達と同じなのね」
「……盗賊以外」
「そう言えば盗賊がまだだったよね、盗賊ってその辺結構いるのに……」
 私達はプレイヤーズ・バーを見回す。
 バーの中はジョブが盗賊のキャラが多かった。流行ってるのかな?
「ここにいるのは暗黒の略奪者達…… ようやく世界は闇に染まったと言う訳か」
「いや、みんな姉さんと同じ理由でゲームやってる訳じゃないんだから……」
 ホイップ君は言う。
 するとレミ達も言って来た。
「最近そう言うアニメとか漫画多いよね、ダークヒーロー系って奴?」
「特撮は昔から多い、悪の組織の力を正義の為に戦ったりする……」
「要するに皆さん中二病って事ですね」
「違うから……」
 セナさんは中二病の事を良く分かっていなかった。私も良く分からないのだけど……
「あ、所でお姉ちゃん幾つだっけ?」
「何言ってんの、この前17になったじゃない、ケーキ一緒に食べたでしょ」
「そうじゃないよ! ランクだよ!」
 お約束のようにボケたお姉ちゃんに私は尋ねた。
「ランクは9よ、アンタ達と同じでしょ?」
「じゃあお姉さんも一緒に特別クエスト出ようよ! 丁度1人足りなくて困ってたのよ!」
「ちょっと待ちなさいな! お姉さまは私と特別クエストに行くのですわよ! 当然お姉さまのお姉さまもご一緒に……」
「私もコロナさんと行きたいです、折角また会えたんですから」
「そうね、ここで会ったのも何かの縁だし、できればみんなで行きたいけど……」
 私は皆を見回した。
 するとエミルが項垂れながら言って来た。 
「どう見ても1人足りないよね〜、こうなりゃ中二でも中三でもいいから仲間欲しいよ〜」
「止めてくださいよ、そんなの姉さん1人で十分なんですから」
「いやぁ、ウチは特撮オタクが2人もいるから、中二の1人や2人いても大丈夫よ」
 自分の事は棚に上げて……
 最後の1人が見つからない、よく漫画とかで見るシチュエーションだ。
「誰か知り合いとかいないの? 友達がゲームやってるとか……」
「むぅ、我らの他に闇の盟友達はいるにはいるのだが、残念な事に覚醒に至らぬ者達や、新たな世界に旅立ってしまった者もいる…… 生憎と力にはなれる者はおらぬ」
 早い話し、ショコラさんとホイップ君の友人もこのゲームをプレイしているのだけど、ランク9のユーザーはいないらしい。
 するとセナさんやサリアさんも言って来た。
「ごめんなさい〜、私、ずっと1人でした〜」
「仲間等いなくともお姉さまさえいればそれで十分ですわ」
「困ったわね……」
 私達は頭を抱えた。
 するとお姉ちゃんが言って来た。
「ねぇ、あれ使わないの?」
「え?」
 私は首を傾げた。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki