ねとげ~たいむ
私が言う隣、それはリアルの世界の隣の事だった。
宮崎・茜として部屋を出ると廊下を右へ、僅か5〜6歩の所にある扉の前にやって来た。
出来るだけこの部屋には入りたく無かった。そう思いながらドアをノックした。
「ちょっと、入るよ」
ゆっくりとドアノブを回して開ける。
部屋の中の様子を見ると思わず私は顔を顰めた。
一応クーラーは効いている、部屋中に服や荷物が散乱し、テレビの片隅にはゲームソフトが山積み重なっていた。
中央にある小さなテーブルの上には無数のジュースの空き缶やスナック菓子やチョコレートの箱が詰まったコンビニのビニール袋が置かれていて、さらに学習机の上に乗っているパソコンの前には1人の女の子が座っていた。
そのパソコンには私のアバター、コロナの青バージョンと言うべきアバターが映っていた。
「ったく、私が片付けたのに何でまた散らかるのよ?」
「ん?」
彼女は私に向かって振りかえった。
夏休みで昼夜が逆転しており、腰まである長い髪もボサボサ、未だに眠たそうに目が半開きの彼女は左手に持ったカップのアイスを右手のプラスチックのスプーンですくいながら口に含んだ。
ここまで言えば分かるだろう…… 彼女が私の実の姉、『宮崎・蒼』だった。