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ねとげ~たいむ

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 街に戻って来た私達の冒険者ランクは9となった。
 エキスパート・レベルに王手をかけた。
「コロナ凄かったね、その武器今までどうして使わなかったの?」
 エミルは私が背負っている大鋸を見る。
「ああ、戦士の武器の中には盾を装備できなくなる武器もあるから、それにスピードも落ちるから……」
「気軽に使える武器じゃないって事か、スピード重視の敵が来たら致命的ね」
「大丈夫大丈夫、スピード系ならアタシがいるから」
「いや、アンタの大丈夫ほど危険な物は無いのよ」
「何よっ?」
「2人供落ちついて」
 いつも通り喧嘩を始める2人を私は駐在する。
 するとその時だった。
「あ、お姉さまっ!」
「うっ!」
 私の背筋に悪寒が走った。
 恐る恐る振り返るとそこにいたのは案の定サリアさんだった。
 しかしサリアさんは少し泣きそうだった。スタスタと速足で迫って来るとその迫力に負け、私は思わず後退してしまった。
「お姉さま、私を無視するなんて酷いですわ!」
「え、無視って…… メールの返事は出しましたけど?」
 あの夥しい数のメールを一々1つづつ返すのは面倒なので全部一括して『メールは全て拝見しました。私も今さっき父の田舎から帰って来たばかりです、とっても楽しかったです』と返信した。
 もし無視と言うなら何か特別な内容が書かれたメールがあったのかもしれない……
「そんな事等どうでも良いのです! 私が言ってるのはさっきの事です! 武具屋でお呼びしたのに、お姉さまは私などまるでその辺の石コロのように気づかず…… 私などどうでも良いって言うのですかぁ?」
「ちょ、ちょっと待って! それってどう言う事?」
 全く話が見えなかった。
 私はさっきまでクエストに行っていた。
 最後に武具屋に行ったのは3日前にラビリンス・ワームを倒した装備を作りに行った時以来だった。
 するとレミがサリアさんの両肩に手を置き、引き剥がすように私から離した。
「サリア、落ちついて、私達はさっきからずっと一緒にいたのよ」
「私だってさっき…… あれ、でもそう言えば……」
 サリアさんが口ごもった時だった。
「あ、コロナさ〜ん!」
 すると1人の女の子が私に手を振っていた。
 それは以前、私が素材を集める時に知り合った狩人のセナさんだった。
「探しました。やっと会えました」
「コロナ?」
「あ、ほら、以前話したでしょう、ファイア・ソードを作る時にお世話になったハンターのセナさん」
「こんにちは、ハンターのセナです」
 私がセンリ達にセナさんを紹介すると彼女はにっこり笑いながら頭を下げた。
「私、あれから頑張ってランクを上げまくって後少しでエキスパート・ランクになれる所まで来たんですよ…… あ、そうそう、私驚きました。何しろさっきコロナさんのそっくりさん見かけたんです、思わずコロナさんの双子の子かドッペルゲンガーかと思いました」
 相変わらずよくペラペラと喋る人だなぁ…… と思った時、この言葉の中に気になるワードが出て来た。
「私のそっくりさん?」
「古人曰く『世の中に似た人は3人いる』、同じパーツでアバターを作った人がいても不思議じゃ無い」
 センリは推理する。
 確かにそれなら納得が行く、だが偶然と言うのは続く時はとことん続く物だった。
「あ、やっぱり来てたんだ」
 やって来たのは一見女の子に見えるけど実は男の子…… いや『男の娘』とも言うアバターだった。
 彼は月の欠片のクエストを一緒に受けたホイップ君だった。
「ホイップ君、ショコラさんは?」
「ああ、姉さんは……」
 ホイップ君は顔を強張らせながら後ろを見た。
 その目線の約5メートル先、そこには確かにショコラさんはいた。だけど……
「クククッ、待たせたな、闇の定めに導かれし達よ……」
 私達に背を向け、後姿のショコラさんは両肩を上下させて不敵に笑いだした。
 そしてクルリと回ると右手を空に掲げた。
「常夜の闇に誘われ降臨、我が名は…… ミスティ・フィル・ダークショコラ!」
 まるで五光が差したかのように背後が輝き始めた。
 その姿を見るなり皆目を細めた。1人だけセナさんだけが物珍しそうに見ていた。
 私は本気で呆れて顔を上げられずにいるホイップ君を見る。
「つまり中二病が悪化したと……」
「弟も大変ね」
 エミルも言って来る。
 本当にこんなお姉さんがいたら大変だった。
 いや、私も姉はいるけど、私の姉はある意味本当に大変だ。
 なんか一気に勢ぞろいになった4人も私達と同じランク9になったと言う、確かにあれから皆頑張ったんだろう、装備も充実していた。
「ところで太陽の子よ、そなた用事は済んだのか?」
「太陽の子って…… ああ、私?」
「違うよ姉さん、あの人似てたけどコロナさんじゃないよ、ツインテールだけど髪の毛青かったし……」
「ツインテール? 髪が青い?」
「コロナ、いつイメチェンしたの?」
「してないよ、ってかさっきまでずっと一緒だったじゃない」
 そんなのエミルが1番良く知ってるはずだ。
 しかし良く分かった。私は心当たりがある。
「みんなちょっと待ってて、今丁度隣でやってると思うから」
 そう言うと私はホイップ君と同じくらいの、いや、それよりも深いため息を吐いた。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki