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ねとげ~たいむ

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 残り時間3分を切った。
 皆のおかげで外殻に亀裂が入った。
「よし後少しだ!」
「だけどFPが……」
「……戻って回復してる暇は……無い!」
「出し惜しみしてる暇は無いわ!」
「ちょおぉ……」
 ガントさん、メイズさん、ライトさん、シャドウさん、ドランさんはFPを見る、皆のFPは底を尽きつつあった。
 それはもちろん私もだった。気合い斬りを連発し続けた責だ。
 だけど私達の役割は変わらない、それでも攻撃を続けて外殻を破壊する事だ。
「まだまだです、普通に攻撃は出来ますよ! はあっ!」
 私はショート・ソードを振るって外殻を斬り続けた。
 しかしその時、戦っているエミル達の隙を狙って1匹のフライング・モンキーが私達に襲いかかって来た。
 レミは慌てながら私に叫んだ。
「コロナ、危ないっ!」
「えっ?」
 振り向くとフライング・モンキーが牙を向いて迫って来た。
 だけど私は身を翻してフライング・モンキーを切り裂いた。
『ギャアアアアッ!』
 フライング・モンキーは消滅した。
 だがその瞬間、私のレベルが上がった。
「えっ? これって……」
 さらに私の技のコマンドに新たな技が追加された。
 このゲームもレベルが上がればHP・FPも回復する、私のステータスはマックスだった。
「そうだ!」
 私は技コマンドを選択し気合い斬りを選択する。
「気合い斬りっ!」
 私の攻撃が外殻を砕いた。
 ナイトメア・ドラゴンの弱点が心臓のように脈を打っていた。
「みなさん、今です!」
「「「「「よっしゃああああっ!」」」」」
 私が言うと皆は攻撃した。
 斬撃と打撃の連続攻撃が炸裂し、ナイトメア・ドラゴンの急所を攻撃した。
 あまり攻撃は受けて無かったとは言え無数のアバター達の攻撃を食らってナイトメア・ドラゴンが苦しむ。
『ギャアアアアッ!』
 ナイトメア・ドラゴンは苦しみに暴れ出す。
 私は間合いを空けて新しく覚えた技を選択した。
「渾身っ!」
 私の足元から赤い光が発せられて体に纏わりついた。
 これにより私に攻撃力が2倍になった。
「気合い斬りィ―――っ!」
 強化された一撃がナイトメア・ドラゴンの弱点を切り裂いた。
『ギャアアアアアアァァアアア―――ッ!』
 断末魔を上げるとナイトメア・ドラゴンは大地に崩れ落ちた。
 私達は地面に降り立って動かなくなったナイトメア・ドラゴンを見る。
 刹那の沈黙がフィールドを支配する。
「や、やった…… やったぁ―――っ!」
 エミルが大きく叫ぶと、それに釣られて他のアバター達も飛び跳ねたり互いに抱きしめ合ったりして喜びを分かち合った。
 するとレミが私の側にやって来た。
「やったわね、コロナ」
「えっ? 私?」
「他に誰がいるのよ? 貴女のおかげで勝てたのよ」
「そんな、私が弱点見つけたのは運が良かったからで……」
「古人曰く『運も実力の内』だよ」
 センリはそう言いながら微笑した。
 するとエミルが後ろから抱きついて来た。
「そうだよ、もっと喜びなよ! コロナは今日のヒーローなんだから!」
「ヒーロー? 私が?」
 私は周囲を見る。
 レミやセンリ、他の人達も私を見て頷いた。
 私は一間置いて言った。
「そんな事無いよ……」
「コロナ? 嬉しく無いの?」
 エミルが首をかしげた。
「そうじゃない…… でもね、私だけが英雄なんて大げさすぎ、みんなのおかげで勝てたんだもの、みんな英雄よ!」
 その通りだ。
 例え弱点を見つけても私1人じゃ勝てなかった。
 皆がいたからこそこのクエストは勝つ事ができた。だから私1人の勝利じゃ無い、このクエストを受けてプレイしたランク1のユーザー全員の勝利だった。
 負けてリタイヤしちゃった人もいるだろうけど、それでもみんな頑張った。それだけで十分だ。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki