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ねとげ~たいむ

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 一方、エミルは薄暗い森の中を歩いて行った。
「全く、レミの分からず屋! ケチケチしないでも良いじゃない!」
 エミルの機嫌は直らなかった。
「こうなったら、アタシ1人でゴブリンを倒してやるんだから!」
 ベルトに差してあるトンファーを構えて言い放った瞬間だった。
『ギギ……』
『ガガ……』
 エミルはその正体を知っていた。
「コソコソ隠れてないで出てきなさいよ!」
 エミルが叫ぶと草むらの中から大量のゴブリン達が現れてエミルの周りを取り囲んだ。
 しかも通常のゴブリンだけではない、棍棒だけじゃなく剣や鉤爪を装備した者もいる、それらは通常のゴブリンより強力なソード・ゴブリンとクロー・ゴブリンだった。
「丁度いいや、こっちはムシャクシャしてたんだから!」
 エミルはゴブリンに向かって突進した。
「くらえ、連続エミル・ぱ〜んちっ!」
 エミルのトンファーが青く輝くとゴブリンに連続攻撃が放たれた。
『ギャアアーッ!』
 エミルの攻撃を食らって倒されたゴブリン達は消滅した。
『ギギッ!』
『ガガッ!』
 すると別のゴブリン達が背後から攻撃して来た。
「スキル発動っ!」
 エミルは自分の持っていたスキルを発動させる、
 途端エミルが煙のように消えてしまうとゴブリン達の攻撃が空を切った。
「こっちだよ!」
 ゴブリン達が背後を見るが遅かった。
 エミルは右足を引くと軽くジャンプ、反撃の一撃を放った。
「ろ〜りんぐ・きっくっ!」
 青く輝く右足の回し蹴りがゴブリン達をなぎ払った。
『ギャアアッ!』
 地面に叩く蹴られたゴブリン達はたちまち消滅した。
 これはエミルの持っている『スルー・スキル』による物で、一定の確率でだが回避する事が出来るのだった。
 これもコロナの鉄壁スキルどうようでどの初級職ならば誰でも装備できるが、素早さを重視している武闘家や盗賊の方が発生確率は大きかった。

 ゴブリンとの戦いはエミルの優勢だった。
 エミルは力こそコロナに劣るが、総合的な戦闘力はパーティで一番だった。
 さらに森の中での戦闘でレベルも上がっていてエミルと言うキャラクターは強くなっていた。しかし……
「くっ……」
 エミルはコマンドを開いてみる、
 ライフ・ゲージとフォース・ゲージが3分の1を切っていた。
 ゴブリンの群れはまだまだ存在する、
 しかも最悪な事態が続いた。
「あっ!」
 エミルが見ると木々を倒しながらそれは現れた。
 巨大に肥大した腹、大木ほどもある腕、人間の子供は軽く握れそうなくらい巨大な右手には巨大な両刃の斧が握られ、両肩には1本角の生えた人間の髑髏の様な物を黒い革製のベルトで胸から背中にかけてXの字で固定した肩当て、頭には2本の角の牛の角が生えた鉄兜をかぶっていた。
 こいつこそがこのクエストのボスでゴブリン達の長、ボス・ゴブリンだった。
「やっば…… あ、そう言えば確か!」
 エミルはコマンドの中から『道具』を選択、回復アイテムの『傷薬』を取りだした。
 これは先ほどモンスターを倒した時に手に入れた物だった。
 慌ててダメージを回復しようとするが、相手の方が早かった。
『ガアアアッ!』
 巨大な斧がエミルの頭上か振り下ろされた。
「きゃっ?」
 ボス・ゴブリンの攻撃をエミルは後ろに跳んで回避する、攻撃はそのまま地面を砕いて砂煙を上げた。
「あんなの食らったらひとたまりもない!」
 エミルは慌てて傷薬を使い回復する、
 だがその時だった。突然空を割く音とともに1本の矢が飛んできてエミルの右足をかすめた。
「うっ?」
 見ると茂みの中に数体のクロスボウを持ったゴブリンがいた。
 そいつらはボウ・ゴブリン、その名の通りクロスボウを武器に戦うゴブリンで、攻撃力はソードやクロ―より低い、実際先ほどの矢のダメージは1、現実世界では蚊が刺したほどのダメージでもないが、しかし上記の2体と違い厄介な所がある、
「えっ?」
 突然エミルの体に稲妻の様な物が走ったかと思うと体の自由が利かなくなった。
「ちょ、やだ! 痺れちゃったの?」
 いくら防御力の低い武闘家でもレベルを上げれば攻撃をダメージは軽減できるが毒や麻痺などのバッド・ステータスを防ぐにはスキルか耐性を持つ防具を装備する必要がある、
「くっ」
 エミルは恐怖に顔をひきつらせる、
 ゴブリン達はジリジリとエミルに近付くと一斉に飛びかかった。
「もう、ダメ!」
 もはやこれまで、ゲーム・オーバーかと思われたその時だった。
「スキル発動っ!」
 ほんの一瞬の出来事だった。
 目の前に1人の少女が現れたかと思うと構えていた盾でゴブリン達の攻撃を防いだ。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki