ねとげ~たいむ
一体どれだけの人達がリタイヤしただろう?
初心者の私がゲーム・オーバーにならずにここまで残れたのは正直奇跡だな、他の人達に助けらた事もあるけど……
「後少しだな……」
私は時間を確認する。
残り時間は30分を切っていた。
ある程度レベルも上がってステータスも上がった。
技も覚えたし、レベルも上がったし、お金もたくさん溜まった。
「まぁ、こんなもんか……」
私にとっては満足だった。
このままレベルを上げ続けてクエスト・クリアで悪くは無いと思った。
だが!
「きゃっ?」
突然地面が揺れ動いた。
地割れが起こるとその中から1匹の巨大モンスターが現れた。
全身光沢を放つ鉄の様な黒い鱗、頭には左右に4の角と天辺から黒く毒々しい背びれが首元まで生え、背中には甲虫のようになった胴体と鋭い3本の爪の逆関節の4本脚、左右に無数の鋭い棘が生えた尻尾のドラゴンだった。
『ナイトメア・ドラゴン』
モンスターの名前が表示される。
「こりゃまた凄いのが……」
このイベントのボスだろう、でもどう見ても上級ランクのモンスターだと思った。
他のユーザー達も同じ気持ちだろう、そう思っていると……
「ようやく骨のあるのが出て来たな!」
そう言ったのは休憩所で出会ったあのアバターだった。
彼は棍棒を振りまわしてナイトメア・ドラゴンに向かって行った。
「パワー・ドライブッ!」
鈍器装備時の技が炸裂する。
しかし硬い鱗に弾かれてしまった。
「うおっ?」
アバターは地面に転がった。
すると攻撃された(内にも入らないだろうが)ナイトメア・ドラゴンはアバターを睨みつけた。
『グルルル……』
「や、やべっ!」
アバターは顔を引きつらせると慌ててその場から逃げだした。
『グオオオオオっ!』
ナイトメア・ドラゴンの口から紅蓮の炎が吐き出されて地面が爆発した。
「うわあああっ!」
アバターは転ぶと画面から消滅した。HPが0になったんだろう。
元々少なかったのかもしれないし、直撃じゃ無いとはいえ攻撃力は侮れなかった。
「出すランク間違ったんじゃないの?」
きっと倒す必要はないんだろうけど、私はスタッフを疑った。
そう考えているとナイトメア・ドラゴンは町の方へと向かって行った。
「不味い! 街に行かせせちゃダメだ!」
「クソ―――っ!」
他のアバター達は攻撃する。
しかし攻撃も魔法もナイトメア・ドラゴンに弾かれてしまった。
私も参加しなきゃいけないと思って技コマンドを開いた。
「気合い斬り―――っ!」
私はナイトメア・ドラゴンの足に攻撃した。
だけど案の定斬撃は弾かれてしまった。
「これでもダメなの?」
攻撃がいっこうに通らない相手とどうやって戦いば良いのよ?
『グラアアアッ!』
ナイトメア・ドラゴンの尻尾を振って後ろにいたアバター達を横一列に薙ぎ払った。
勿論この中に私もいた。
「きゃあああっ!」
私や他のアバター達も吹き飛ばされた。
宙で弧を描きながら私はある場所に叩きつけられた。
「ううっ…… あ、あれ?」
今見た場所を見る。
そこはナイトメア・ドラゴンの背中だった。
「ええええ〜〜〜っ?」
私は叫んだ。
「どどどどど、どうしよう〜〜っ?」
私は慌ててしまった。
モンスターの背に乗るなんて想定外の事だった。
とりあえず身を乗り出して下を見る。
ゲームだから飛び降りた所で私自身痛くも痒くも無い、だからとりあえず戻ろうと思った時だった。
「ん?」
ふと振り返ると不思議な光を発している物があった。それは赤く脈打つ人間大位の物体だった。
「これって…… まさか!」
私はショート・ソードを構えて物体を切りつけた。
『ギャアアアア―――ッ!』
ナイトメア・ドラゴンが叫ぶと私の足場が大きく揺れ動いた。
しかしこれで納得が言った。これはナイトメア・ドラゴンの急所だった。
「よ〜し!」
私は『気合い斬り』を使おうとした。
するとその時、足元から無数の牙の様な物が突き出ると弱点を包み込んだ。
「えええっ?」
どうやら弱点が露出しているのはほんの一定時間らしい。
途端空から無数のモンスターが私の周囲に降り立った。
蝙蝠の様な羽が生えた黒い体毛に覆われた猿のモンスター『フライング・モンキー』だった。
「くっ!」
私は振り返って剣を構え直す。
だけどこんなにたくさん私じゃ対処しきれなかった。
「エミル・スーパー・ロイヤル・グレート・ミラクル・ダイナマイト―――っ!」
途端フライング・モンキー達が吹き飛ばされた。
モンスターが1匹もいなくなると代わりにいたのは数人のアバターで、中にはレミとセンリがいた。
「貴方達は……?」
私はここにいる人達を見る。
「アタシは武闘家のエミル、助けに来たんだよ!」
エミルが後ろを見るとレミとセンリも頷いた。
「貴女のおかげで弱点が分かったのよ、ここは力を合わせない?」
「右に同じ」
レミが言うとセンリは右手でvサインを作った。
他のアバター達も自分の武器を構えて微笑する。
「戦士のガントだ。一緒に戦おう!」
「狩人のメイズよ、よろしくね!」
「どうも、僧侶のライトです」
「……盗賊のシャドウ」
「武闘家のドラン、ほぉおっッ!」
それぞれ鉄の大剣、ツイン・ダガー、ストーン・クラブ、鉄の爪、パワー・グローブなどの初級だけど良い武器ばかりだった。
「勿論アタシ達だけじゃないよ、ほら!」
エミルが指差した先には他のアバター達が手を振っていた。
「「「「「わぁあああああああああ!」」」」」
最初はみんなバラバラに戦ってた。中にはパーティを組んでいる者もいるんだろう。
だけど終了時間数分前、皆が1つになった。
「はい! お願いします」
私も力いっぱい頷いた。