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ねとげ~たいむ

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 私は洞窟を抜けて表に出た。
 黒くゴツゴツとした岩場が広がり、空はまだ先にある火口から噴き出す煙で覆われていた。
「さて、この辺りを探してみようかな」
 私はつるはしを取りだした時だった。
「助けて〜」
 私の耳に情けない声が聞こえて来た。
「えっ? どこ?」
 私は周りを見る。
 すると平たい地面に一か所、ポッカリと空いた穴があった。
 声はその下から聞こえて来る。
「誰かいるの?」
 私は穴に近付いて両手膝を地面に着けると内部を覗き込んだ。
 そこにいたのは1人の女の子だった。
 青紫色の後ろ髪が跳ねあがったボブ、左肩だけのショルダー付きの胸当てと黒いスパッツの上から動物の皮の腰巻を巻いた皮のブーツと背中に矢筒を背負った私(コロナ)より背の低いキャラだった。
「あ、良かった、助けてくださ〜い」
 女の子は私を見ると大きく手を振った。
 私は道具袋からロープを選択すると中に放り投げた。
 女の子はロープを伝って表に出る。
「ふぅ、助かりました。このまま時間切れを待つかと思ってました」
 女の子はにっこりと笑うと深々と頭を下げた。
「良かったですね、でも何で落とし穴に? もしかして誰かが作ったのに落ちたんですか?」
「あ、いえ、これは私が作ったんです」
「は?」
 私は首をかしげた。
 つまり彼女は自分で作った罠に自分ではまった事になる。
「いや〜、この辺に現れるモンスターって結構足が速いのが多くて、それで落とし穴幾つも仕掛けて待ち伏せしてたんですけど中々来なくて、それで他の所で錬金の素材集めてたら自分で仕掛けた罠の場所が分からなくて…… 道具袋見たらロープ切らしてたモンですから……」
 口調は丁寧だけどペラペラ良く喋る子だな。
 錬金の素材を集めてたって事は彼女も目的は私と同じみたいだった。
「えっ? じゃ貴女も?」
「今は仲間達と別行動なんですけど」
「いいなぁ、私も一緒に遊べる仲間が欲しいです、私ずっと1人なんですよ〜」
「良かったら一緒に行きませんか?」
「えっ? いいんですか? どこの誰かも分からないのに?」
「それは勿論、ええと……」
「あ、ごめんなさい、自己紹介がまだでしたね、私は狩人のセナです」
 セナさんは右手で敬礼をする。
「戦士のコロナです、よろしくお願いします」
 私が手を伸ばすとセナさんは嬉しそうに握手をした。
 セナさんは私と同い年で、地元である福岡の学校に通っている高校1年生だと言う。
「そう言えばコロナさんって仲間がいるんですよね、何で一緒にやらないんですか?」
「ああ、折角だから分かれて探そうって事になったの、4人で手分けした方が早いから」
「ああ、なるほど、友達いると手わけできて素材楽に集まりますもんね、私なんてずっと1人でやってきましたから、ここまで来るのに時間がかかって……」
 セナさんはため息を零した。
 セナさんは私がゲームをやる5ヶ月前からやってると言う。
 1人でコツコツやってレベルをあげ、クエストをこなしてここまでこれたと言う。
「素材集めてるって事は作りたい武器でもあるんですか?」
「ええ、バーニング・ルビーが欲しいんです、このファイア・ダガーを錬金したくて」
 私は道具コマンドを出してファイア・ダガーを見せる。
「ああ、バーニング・ルビーは難しいですよね、でもつるはしで岩叩いて探してたらもっと効率悪いですよ、確かに安全ではあるんですけど……」
「どう言う意味?」
 私は尋ねる。
 まるでバーニング・ルビーが簡単に見つかるような言い方だった。
「可能性の問題ですし、いつもと同じですよ」
 セナさんは言った。
 このクエストにもボスがいて、そのボスを倒せば欲しい素材が手に入るかもしれないと言う。
「そう言えば書いてありましたね」
「フィールドによってボスは違いますけど可能性高いですよ、ただ持ってるかどうかは保証できないですけど」
「確か…… マグマ・レックスでしたっけ?」
「火口に行けば会えますよ」
 前にも言ったけど別にボスを倒す必要も無い、まだ時間はあるし、このまま普通に探しても構わなかった。
「あ、そうだ。良かったら一緒に行きませんか? 実は私も欲しい物があるんですよ」
「でも火山フィールドって事は炎属性のモンスターですよね? 私、水や氷属性の武器持って無いですよ」
 残念ながら私は炎属性の武器しかもっていない。
 別に炎属性の武器だからってダメージが低いってだけで攻撃その物が効かない訳じゃない。
 一応ファイア・ソードと錬金用に購入したバスター・ソード、それとモンスターを倒して手に入れたレミが持ってる『鋼鉄の槍』とさっき宝箱で見つけた童話に出て来る鬼が持ってる金棒の様な武器『メタル・スパイク』があるにはある。
 だけど下級クエストでもランクが上がれば属性無しで戦うのは辛い。
「あ、私が持ってますよ、ほら」
 セナさんは自分のコマンドを開いた。
 セナさんの装備しているのは氷河の弓だった。
「あと罠も沢山ありますよ、即席落とし穴の他にも大型トラバサミと巨竜爆弾と……」
 セナさんは自分の持っている罠を説明する。
 その落とし穴にはまってたのはセナさんなんだけどな…… 彼女と一緒にいるのもかえって不安になって来た。
 だけどこのまま探しても確率は低いし、セナさんとパーティーを組む事にした。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki