ねとげ~たいむ
私達はやっと頂上にたどり着いた。
山頂は今まで通って来た道と違い草木一本生えていない荒地で、幾つものクレーターが出来ていた。
すると私達の来た道に近くにある道からエミル達がやって来た。
「あ、アンタ達っ!」
「どうやら同着だったみたいね」
「古人曰く、遅牛も淀早牛も淀」
「まだまだよ、星の涙を取って無い」
「あっ!」
ホイップ君が空を指差した。
すると空から無数の流星群が尾を引きながら降り注いだ。
周囲に爆音と土煙を立てながら大地を抉って無数のクレーターが出来上がる。
土煙が晴れるとクレーターの中央に青くほのかに輝く物を発見した。
「あれが星の涙?」
「らしいわね」
「まさに星の涙」
「お宝いただき〜っ!」
「あ、待ちなさいよコラ〜っ!」
ショコラさんが一足早くクレーターの中に降りるとエミルもそれを追った。
「全くあの2人は……」
「あはは……、ん?」
私が苦笑したその瞬間だった。
いきなり地鳴りのような物が聞こえて来て振り向くとそこには巨大な影があった。
「危ない!」
私は鋼の剣を引き抜いて攻撃するが攻撃はあっさりと交わされてしまった。
大きく宙に舞うと満月をバックにクレーターの中に落ちた。
「エミル! ショコラさんっ!」
「「きゃああっ!」」
2人の悲鳴が聞こえる。
私達は慌ててクレーターの中へ飛び込む。
2人は地面に転がっていた、どうやら無事みたいだ。
「何なのよ〜?」
「うええっ?」
エミルが顔をひきつらせた。
そこには1匹の巨大なモンスターが立っていた。
熊のように大きく、全身が白い体毛に覆われ、大木の様に太い腕と鋭い5本の爪が生えた手、兎のように長い耳に鋭い牙が生えて地に染めたような真っ赤な瞳のモンスターだった。
『ベアット』
モンスターの名前が表示される。
ベアットはあろうことか足元にあった星の涙を持ちあげると口を大きく開けて呑み込んでしまった。
「ああ――っ! アタシの星の涙――っ!」
「違うっ! 私達のよ!」
「姉さん! それよりもモンスターをどうにかしようよ」
「戦わないと星の涙が全部食べられちゃうよ!」
私はエミル達に言う。
『ガアア――っ!』
ベアットが空に向かって吠えると変化が訪れた。
ベアットの体毛が逆立つとバチバチと火花を立てながら青白く発光し、鋭い爪を振りまわしながら私達に襲い掛かって来た。
「皆さん、下がって!」
するとホイップ君が前に出ると地面に手を付いて魔法を唱えた。
「ウォール!」
すると地面から金色の光が間欠泉のように噴き出して壁となってベアットの攻撃を防いだ。
「中々やるじゃない!」
レミは光の壁から飛び出すと鋼の槍で渾身の力を込めた突きを繰り出した。
しかしベアットは後ろに飛んでレミの攻撃を回避した。
「チッ!」
レミは舌打ちをする。
だけど攻撃は続いていた。
今度は私とエミルが飛びこんで技コマンドを選択した。
「気合い斬りっ!」
「エミル・みさいる・きぃ〜〜っくっ!」
私の技とエミルの飛び蹴りが炸裂する。
しかし相手がベアットはとっさに膝を曲げてジャンプして私達の攻撃を交わした。