ねとげ~たいむ
遠回りのルートを移動中、ホイップ君が言って来た。
「ごめんなさい、姉さんのせいで……」
「良いの良いの、気にしないで」
私は手を振った。
それはお互い様だからだ。
結果的にいつものパーティのメンバーとは(ほんの数分間だけ)敵になっちゃったけど、いつものパーティと違うプレイヤーと冒険するのも悪くは無かった。
坂道を上がりながら私達はモンスターと戦った。
猛毒の大蛇キラー・バイト、黒い身体に大きな瞳で火炎系魔法を操る邪妖精インプ、巨大な蛭ビック・リーチなどが現れた。
「裁きの雷にて塵に還れ! サンダー・ヘル・クライシスっ!」
突きだしたショコラさんの杖の先端から強力な雷撃が放たれて無数のモンスターを蹴散らした。
ショコラさんの魔法は強かった、少なくともセンリくらいにレベルは上げてる、だけど名前の方に問題があった。
個人が技や魔法に名前を付けるのを私は反対しない。
だけどエミルはネーミング・センス悪いけど、彼女の場合は中二病と言うのだろう、下手にセリフを練りすぎて意味が分からなかった。
「姉さんがダサいからって名前変えちゃったんですよ」
ホイップ君が言って来た。
するとショコラさんが言って来る。
「コロナも名前変えたら? 気合い斬りとか流星斬なんて今時流行んないよ」
「いや、私は別にこだわって無いから……」
「そうなの? あ、なら私が考えてあげようか?」
「そ、それはまたの今度の機会って事で」
さすがに私は断った。
「姉さん、僕の魔法の名前まで変えようとしたんですよ」
「良いじゃない、最近じゃそう言うのよくやってるじゃない」
「深夜アニメの見過ぎだよ…… 大体横文字使うくせに何で英語のテストで赤点取るんだよ? お母さんこの前泣いてたよ」
「ネーミングと英語の成績なんて関係ないでしょ! 大体勉強なんて何の役にも立たないじゃない、私は実家のケーキ屋さんを継ぐんだから!」
「その度に新作ケーキの実験台にされる僕の身にもなってよ……」
「実験台って何よ! タダでお姉さまのケーキ食べさせて上げてるんだから感謝しなさい!」
ホイップ君はこの世に神様も仏様もいないかの様な顔をした、苦労してるんだな……
でも私はその光景が懐かしかった、昔は良くお姉ちゃんとこうして話してたっけな。
「みんな今どうしてるかな?」
私はエミル達の事を思った。