ねとげ~たいむ
私達はとりあえずエミルと女の子を宥めた。
当然エミルとその子は互いの顔を見ようとせず背を向けた状態で頬を膨らませていた。
「ごめんね、ウチのエミルも悪気があって行った訳じゃ無いから」
「いえ、姉さんこそ一度言い出したら聞かない性格ですから……」
私が頭を下げると僧侶の子も頭を下げた。
2人は姉弟でこのゲームをプレイしている魔道士のショコラさんと僧侶のホイップ君だった。
って言うかホイップ君が男の子だったのが驚きだった。
「本当はもっと男らしいのにしようと思ったんですけど、姉さんが勝手に決めちゃって……」
「可愛い方が良いじゃない、男が細かい事言うんじゃないわよ」
細かい事かな?
それにしても『ショコラ』と『ホイップ』って言うのも随分美味しそうな名前だった。
何でも2人のお家がケーキ屋さんだかららしい、これもお姉さんが決めたと言う。
「何か安直〜」
エミルはさっきの事を根に持ってるのか、その言葉には思い切り皮肉がこもっていた。
するとショコラさんが目を吊り上げた。
「そっちこそ『エミル』だなんて訳が分からない、どうせ自分の名前もじったんじゃないの?」
「何よ! アンタはアタシのネーミング・センスにケチつけるの?」
「思いっきりケチ付けてやるわよ!」
エミルが身を翻すとショコラさんも同じように反転して互いの顔を睨みつけた。
「とにかく、あのドレスはアタシが買うんだから、武闘家には似合わないわよ!」
「武闘家だって女の子なら装備できない訳ないでしょ! それに私が買うのは装備じゃない、コレクションの為なんだから!」
「私だってお宝ゲット何だから!」
2人供似た物同士だった。
「姉さん、わがままは止めようよ」
「エミルだって散々買ったじゃない!」
「アンタは黙ってなさい!」
「コロナは黙ってて!」
「「はい」」
私とホイップ君は両肩を窄めた。
「はぁ、子供が2人……」
「古人曰く、『類は友を呼ぶ』」
「「違うっ!」」
センリの言葉にエミルとショコラさんの言葉が被った、やっぱり同じだった。
「こうなったら勝負よ! 買った方があのドレスを手に入れるってのはどうかしら?」
「望む所だ!」
エミルは思い切り右手を突きだした。