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ねとげ~たいむ

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クエスト4,欲しい物



 それから一週間後の土曜日の夜だった。
 時間は後30分で午前0時になろうとしていた。
 ランク4になった私達はクエスト更新の前に買い物に行こうと皆で話し合い、町で唯一の武具店『マッスル・カイザー』と言うまるでプロレスラーの名前のようなお店にやって来た。
『いらっしゃいませ、ムンッ!』
『マッスル・カイザーへようこそ、フンッ!』
 出迎えてくれたのは黒光りする筋肉質の黒い髪と白い髪のマッチョ・マン2人組だった。
 それぞれ右肩か左肩だけにトゲ付き肩パットを取りつけた胸当てを装備してボディ・ビルダーの様にポーズを取っていた。
 ギルドの受付やスキル受付のお姉さん同様に色を変えて複数に見せるだけの物だけど、左肩にショルダーを付けた黒い髪の方が武器を売るお兄さん、白い髪で右肩にショルダーを付けた方が防具を売る弟さんだった。
 私達は店内を見て歩いた。
「どっちにしようかなぁ?」
 私の目の前には鋼の鎧か鋼の盾があった。
 そろそろ防具を新調しようと思うのだけれどもどちらにしようか迷っていた。
 鋼の鎧は1250ビアス、でも鋼の盾は700ビアス……
 明らかに安いのは鋼の盾の方、しかし盾を選べば武器の片方を外さなければならない。
 だけど鋼の鎧を選べばほんの少し防御力が上がるだけで素早さは下がってしまう。
 だけど防御力が高いのは鎧の方、だけど盾を選べば兜の方も買う事が出来る。
「はぁ…… どっちを選ぼうかな?」
 やっぱりガード・スキル強化の為に盾と鎧にするべきか……
 いやいや、防御力よりも攻撃に回るべきか……
 そう迷ってる時だった。
「コロナ、コロナ」
「何…… うわっ?」
 私は驚いた。
 そこにいたのはエミルだったのだけど、まるで大晦日の紅白歌合戦にでも出るのかと思うくらいバカでかい衣装に身を包んでいた。
 何て言ったっけな? 昔大阪でやってた万国博覧会のオブジェに6つの天使の羽が生えたようなデザインに顔部分にエミルの顔が埋まっていた。
「……」
 私は言葉すら失った。
 呆然と立ち尽くす私にエミルはクルリと一回転した。
「これすごいよ、防御力高いし」
 最早ツッコミを入れる事すら面倒だった。 
 そもそもこの装備には手も出ていない、下半身も筒状になっている、開発担当者がギャグで作ったとしか思えなかった。
 するとそこへ武器を見に行っていたレミとセンリが戻ってきた。
 レミはエミルの格好を見るなり顔を顰めた。
「アンタ、何て格好してるのよ?」
 案の定と言うべきか、やっぱりと言うべきか、思った通りの言葉でレミが言って来た。
 センリだって言葉には出さないけど内心は同じのはずだ。多分……
「いいでしょう、買っちゃった」
「そう言ってまた無駄遣い?」
「無駄じゃないよ、こうしてとってあるんだよ」
 エミルはコマンドを見せる。
 するとそこには今まで購入した防具が沢山あった。
 しかし武闘家の服の他にもチャイナドレスやバニースーツ、メイド服まであった。
 アイテムや装備の回収がRPGの醍醐味の1つとは言え、これじゃコスプレの領域だった。
「アンタね、手当たりしだい買い物するの止めなさいよ、お金がいくらあっても足りないわよ」
「別にレミのお金で買い物する訳じゃないんだから良いでしょ!」
「良い悪い以前の問題よ、足りなくなってお金借りに来ても貸してあげないわよ」
「別に良いわよ、コロナから借りるから」
「えっ? ええっ?」
 何で私に振る?
「コロナ、甘やかしちゃ駄目よ」
「古姑じゃないんだから細かい事言うんじゃないわよ」
「誰が古姑だ? ったくアンタはいつもいつも……」
「あ、あの服可愛い〜っ!」
「人の話を聞けや、コルァ!」
 レミがまたおっかない人になった。
 しかしエミルは服の方に走って行った。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki