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ねとげ~たいむ

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 私達が見るとそこには1人の女の子が立ち塞がった。その子は勿論……
「「エミルっ!」」
「正義のらぶり〜・ご〜じゃす・ふぁいたー、E・M・I・R・Uちゃん、ただいま参上!」
 エミルは左足を折り曲げ右足一本で立ち上がると大きく広げた左手を天井にかかげ、右手で?サインを出した。
「エミル、来てくれたのね!」
「と〜ぜんっ! センリもいるよ」
 エミルが指を差すとその先で爆発が起こった。
 モンスター達は慄き左右に分かれる、するとセンリが私達の方に近付いてきた。
「お待たせ」
 センリは無表情のまま?サインを出すと体を反転させてモンスター達の方を見た。
「ゾンビ達は私達に任せて、2人はリッチを倒して」
「だ、だけど……」
「コロナ、これ使って!」
 するとエミルは私にある武器を渡した。
 それは私の使ってる鋼の剣の半分も無い半月型のダガーだった。
 ただ長方形の黄金の鍔の中央に炎の紋章が刻まれ、黒い鞘に収まっている。
「これは……」
 私がダガーを受け取ると道具コマンドに武器の名前が表示される。
「ファイア・ダガー?」
 私は装備してダガーを抜く。
 すると短い刀身に炎が灯った。
 つまりこれは炎の魔法を宿した武器だった。
「地下に行く鍵を探す最中にみつけたんだよ、アタシもこれ手に入れたから」
 エミルは手に持っていた杖の様な物を見せた。
 それは両先端に透明な水晶が取り付けられた光沢を放つ銀星の棍、退魔の杖シルバー・ロッドだった。
「私が使うより戦士のコロナが使った方が与えるダメージは大きい…… それとレミ」
「何?」
 センリはレミに言った。
 話を聞き終えたレミは驚いた。
「え、そうなの?」
「レミ、知らなかったの?」
「全く……」
「なら試してみたら?」
「そうするわ」
 レミはセンリからポーションを受け取るとFPを回復させる。
「ありがとね…… さぁて」
 レミは金の髪を払うとモーニング・スターを肩にかけると息を吐いて目を見開いた。
「僧侶レミ、仁義通させてもらいます」
「へっ? ジンギ?」
「何でもないわよ、それよりあのけったい骸骨野郎をぶっ飛ばすわよ」
 レミが見上げた先にはリッチがいた。
 モンスター達に囲まれるように守られている。
「今まで暴れられなかったんだから、これから思いっきり暴れるぞぉーっ!」
 エミルはまるで鎖を解き放たれた猟犬のようにモンスターの中に突撃する。
 そして技コマンドを選択して実行に移した。
 大きく体を捻ってシルバー・ロッドを振りかざすとモンスター達を横一線に薙ぎ払った。
「必殺、エミル・バッティングっ!」
 まるで野球でもやってるかのような名前でモンスター達はたちまち消滅した。
『ケケェ〜〜ッ!』
 不気味な声と供に頭上からスケルトン・マンの群れがエミルを襲う。
 だけどその瞬間を逃すほどセンリは甘く無かった。
 呪文を唱えると足元に魔法陣が浮かび上がるとそこに杖を床に突き立てた。
「メガ・ファイザっ」
 エミルの周りに火柱が上がるとモンスター達を飲みこんだ。
『ギャアアッ!』
 スケルトン・マン達はたちまち消滅した。
 突破口が開いた。
「レミっ!」
「ええっ!」
 私とレミは走る、
 だが倒されてもリッチが新たなアンデット・モンスターを呼び出してしまう、その前にリッチを倒さなければならない。
『ファイダムッ!』
 リッチが手を広げると黒い炎が燃え上がり、私達に向けて魔法を放った。
 杖の先端から無数の紅蓮の火球が放たれた。
 だけど私達は怯まずに特攻、周囲で爆発が起ころうともリッチ目指して走った。
 先に私が技コマンドを選択する。
「気合い斬りっ!」
 渾身の力を込めたダガーでリッチを斬り裂いた。
『ギャアアッ!』
 やっとリッチにダメージを与える事が出来た。
 だけど私達の攻撃はまだまだ続く。
 私は横に跳んで交わすと待機していたレミが自分のスキルを発動させた。
「スキル発動っ!」
 そして右手に白い光が灯ると魔法を放った。
「ラ・ヒールっ!」
 唱えたのは攻撃では無く回復魔法だった。
 これではリッチが回復してしまうと思うだろう、だけど……
『ギャアアアアアッ!』
 リッチは苦しみ出した。
 邪悪な魔法によりその身をアンデット化させたその肉体はゾンビその物、負の魔力で活動を維持する。
 しかし回復魔法は正の魔力、アンデットにとってまさに地獄の苦しみ。
 しかも発動させたのは回復魔法倍増・スキルと言って、通常の回復魔法の1・2倍を回復する事が出来る。
 つまりリッチに与えるダメージも通常の倍のさらに倍と言う事になる。
 だけどまだ終わりじゃ無い。
「渾身っ!」
 私は技コマンドをセレクトする。
 今の私は盾装備を外し、左手にファイア・ダガー、右手には鋼の剣を構えている。
 フラフラになって立ち上がるリッチに向かって2つの刃を振り上げた。
「気合い斬りーっ!」
 2つの斬撃が炸裂する。
『ギャアア―――ッ!』
 リッチが断末魔を上げた。
『……ガ……ハ……』
 リッチはフラフラになりながら数歩下がる。
 片膝を付きながら苦しそうに息を切らせる。
『グッ…… こんな所で死んでたまるものか…… 私は…… 不死身の体を…… ぐはぁ!』
 リッチの全身から黒い炎が噴き出して消滅した。
 これにてクエストは終了となった。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki