ねとげ~たいむ
階段を降りるとそこは大きなフロアだった。
壁には不気味な色の炎を灯したロウソク、部屋の中央には六亡星の魔法陣、そして部屋の一番奥には黒い石でできた玉座があり、頭から黒いフード付きのローブ、肩から襟にかけて赤や青や白の宝石のはまった金の装飾を飾った男が鎮座していた。
「あれって……」
誰が見ても分かる、このクエストのボスにしてアンデット・モンスターの元凶だ。
『ほう、ここを訪れるだけの者がいるとはな』
そいつは言って来た。
「まずったわね、ボス戦になるとは思わなかったわ」
「でもこいつ倒せば終わりだよね?」
私は剣を抜く、
『折角の客人だがここを見られた以上は生かして返す訳にはいかん、この場でその命をもらいうける!』
男が立ち上がるとフードの下から不気味な眼光が輝いた。
そして黒い右手を前に突き出すと黒い稲妻の様なエネルギーが魔法陣に放たれると魔法陣の中からスケルトン・マンが現れた。
「これなら倒せるっ!」
「いくわよ、コロナっ!」
私とレミは自分の得物を構えて走り出した。
相手の剣を避けて私が一太刀浴びせると左肩から右脇腹を砕かれて床に落ち、
レミの遠心力を付けて振り回した鎖付き鉄球のモーニング・スターが相手の頭部に炸裂、頭骸骨が砕かれた。
『グゴッ!』
『ガアッ!』
スケルトン・マンはその場に倒れ消滅した。
「今度は貴方よ!」
私は切っ先を向ける。
『クククク……』
するとローブの怪人は笑いながら立ち上がった。
『中々やるな、私自らが手を下す事になろうとは』
怪人が顔を上げるとフードの中の顔が見えた。
何とフードの下は髑髏だった。
存在していない目の中に赤く光が不気味に輝いていた。
そして敵の名前が表示される。
『暗黒魔道士リッチ』
リッチとは欲望に溺れた自らに不死の魔法をかけた魔法使いだった。
「コロナ、やるしかないわね!」
「うん!」
私達は身を構える、
『カアアっ!』
するとリッチがふわりと浮かびあがると水晶玉を天に掲げる。
途端水晶玉が輝くと床に魔法陣が浮かび上がり、そこからゾンビの群れが湧いて出た。
「また手下?」
「レミ、下がって!」
私は前に出ると技をセレクトする、
「流星斬りっ!」
横一文字斬りが炸裂してゾンビ達は消滅する、
だが……
『来たれ、我が僕どもよ!』
しかし再び魔法陣からゾンビが現れた。
それだけじゃ無かった。
今度はスケルトンやレイスまでもが出て来た。
今回の敵は仲間を呼んで戦うタイプ、仲間のモンスターを倒しても1人でも欠けたら新たな仲間を呼び出す、親玉を叩かない限り戦いは永遠に続く。
「となるとここは……」
私はリッチに狙いを定めるとジャンプすると剣を振り上げた。
「気合い斬り!」
渾身の気合い斬りが炸裂した時だった。
『オオオォ!』
突然リッチの目の前にレイスが立ち塞がった。
リッチの代わりに私の技をレイスが受ける。
だけどレイスに攻撃は通じず、私の剣は空を切った。
「なっ?」
私と同じ仲間をかばう…… いや、この場合はリッチが仲間達に庇わせてるんだろう、
魔法で無理やり動かしている霊魂を盾に自分のダメージを無している。
これがゾンビだから倒せただろうけど、レイスじゃ倒しようが無い。
この場合は誰も庇えない全体攻撃を仕掛けるべきなんだろうけど、生憎私の手持ちの技は個体用の『気合い斬り』とグル―プ用の『流星斬り』だけだ。
全体攻撃が出来るのは攻撃魔法が豊富なセンリか、ランダムだけど爆裂拳(本人はエミル・らっしゅ)を使えるエミルだけだった。
レミの唯一の攻撃魔法『シェイク』は1体にしか通用しない、レイスを1体1体倒してたらキリが無い。
「ど、どうすれば?」
私は迷った。
ゾンビやスケルトンは倒せてもこのままじゃレイスのみが増えて行く、となれば私じゃ倒す事は出来ないし魔導士ほどFPの高くないレミも持たない、
「くっ、FPが……」
レミは歯を食いしばる。
ステータスを開くとFPが少なくなって来ている。
私達は壁まで追い込まれ、逃げ場を失った。
「もう、ここまで……」
「まだよ!」
レミは私の肩をつかんだ。
「センリとエミルは来るって言ったわ、コロナも諦めないで!」
「そのと〜りっ!」
その時だった。聞きなれた声が響くと突然ゾンビやレイス達が吹き飛ばされ、壁や床に激突すると消滅した。