ねとげ~たいむ
クエスト3,仁義の道
バシリスクの事件から一週間後。
私達のパーティは新たなクエストを受けた。
これはゲームなので現実世界に影響は無いと言うのは分かってる。
それは分かってるけど苦手な物は誰にでもある、それは現実だ。
しかも今回のクエストは場所が場所だけに私は憂鬱だった。
「と〜ちゃ〜く」
エミルが大きく手を上げる、
やって来たのは墓場だった。
「はぁ、着いちゃった」
私は両肩を落とした。
今回私達はクエスト・『闇の徘徊者』を受けた。
最近町はずれにある墓地にゾンビやスケルトンなどのアンデット・モンスターが夜な夜な街を徘徊し、民家を襲っては金品略奪すると言う。
「この墓地を抜ければ問題の館ね」
レミが言う。
ゾンビ達はこの墓地の奥にある今は誰も住んでいない館に入り込んでいるらしい。
モンスター達が何の為に館に入っているのかは分からないがアンデット・モンスター達が現れた元凶がその館にあるんじゃないかとギルドが判断し、依頼を出したと言う訳だった。
「でも私が調査員だったら絶対降りるな……」
私は昔からオカルトが苦手だった。
恐い話を聞くと眠れなくなってお姉ちゃんやお母さんの布団に潜り込んだ事があった。
「なに、コロナ幽霊なんて信じてるの?」
「し、信じてるって言うか苦手なのよ」
「そんなのいる訳ないよ、アタシ見た事無いモン!」
私だって見た事無い、って言うか見たいとも思わない。
だけどやっぱり恐い物は恐い。
「コロナ大丈夫、私達がいる」
「そうよ、アンデット系には神官職が強いんだから」
レミは微笑する、
確かに、アンデット系にとって1番の大敵は神官職だ。
聖なる力でゾンビや幽霊達を成仏させる、マンガとかアニメなどで良く見る、
「所詮ゲームだよ、攻撃すりゃ倒せるって」
エミルは洋館に向かって歩き出した。
しかしその時だった。
足元の土を突き破って手が出てくるとエミルの足首をつかんだ。
「きゃあっ?」
エミルは倒れた。
さらに地面が盛り上がるとモンスターが現れた。
『うう〜〜……』
低いうなり声と供に現れたのはゾンビだった。
さらに私達の周りの地面の下からゾンビ達が出現した。
基本は黒い髪の男の人、だけど体の半分腐食していた。
「このっ! 放しなさいよっ!」
エミルは自由の効く左足でゾンビの顔面に蹴りを放った。
途端ゾンビの首が吹っ飛んだ。
ゾンビはたちまち画面から消滅した。
エミルは私達の側に戻ってきた。
「みんな同じ顔しちゃって、少しはCGに気を使えば良いのに」
「経費削減なんでしょ、製作者側の事も考えてあげなさい」
「それより敵を何とかする方が先決」
「そ、そうだね……」
私は剣を抜く。
「うりゃああっ!」
まず飛び出したのはエミルだった。
エミルの渾身の一撃がゾンビ達に炸裂した。
「エミル・ぱ〜んちっ!」
エミルの一撃が炸裂するとゾンビ達はドミノのように倒れた。
「ボル・ライザーっ!」
センリは魔法を放つ、
バシリスクの時同様に光の球体が空に舞うと雷の矢が落ちてゾンビ達を襲った。
『ヴウゥ〜……』
ゾンビ達は倒れて消滅した。
「えいっ!」
私も剣を振るって頭から一閃、
ゾンビは倒れて消滅した。
本当にゲームで良かったと思う、これが現実だったら何度でも立ちあがってくるんだろうな。
そう思ってると新手が現れた。
「なっ?」
私の前を何かが通った。
それは風に揺れる薄い絹の衣みたいに私の前を通ると空で立ち止まった。
海に漂うクラゲのようにフワフワ浮いているそれはゾンビと同じアンデット・モンスターのレイス(浮遊霊)だった。
だけどこいつは厄介だった。
「このっ! このっ!」
私は剣を振る。
しかしレイスにダメージを与えられなかった。
ゾンビは一応体があるから攻撃できるが、幽霊は実体が無い為に物理的なダメージを与える事ができない。
何度攻撃しても『ミス』の文字が浮かんだ。
それはエミルも同じだった。
「あ〜ん、攻撃が効かないよ〜っ!」
エミルの技やキックも擦り抜けてしまう。
しかし相手は攻撃し放題だった。
レイスが体当たりが炸裂する度に私達はダメージを受けてしまう、分かってはいるけど何か理不尽だ。
実体が無い場合は私とエミルは役に立てず、レミとセンリに頼るしかなかった。
「シェイクっ!」
「ファイザっ!」
半月型の衝撃波と紅蓮の炎が唸りを上げてレイス達を包み込む。
『ケケェ―――ッ!』
レイス達は奇声を上げて消滅した。
空の敵は2人に任せて私達は地上のゾンビ達を倒しまくった。
「一気に駆け抜けるわよ!」
レミが号令をかけると私達は立ちはだかるアンデット・モンスターを払いながら洋館の方へと急いだ。
長い道のりを進んで行くと洋館の扉を開いて私達は中に入った。
「べ〜だっ! ホラホラ来てみなさいよ!」
「エミル、止めて!」
エミルはゾンビ達に向かって右目の下目蓋を人差指で下げると舌を出して挑発した。
ドアの外ではゾンビが私達を追って走っているが見えない壁に遮られているようにそれ以上先に進む事が出来なかった。
どうやらここから先に進めば画面が切り替わるらしい、
私はエミルの手をつかんで中に連れて行った。