ねとげ~たいむ
凄く大きなフロアにコンコンと湧きでる湖があった。
道しるべとして通って来た川の水はこの湖から流れている、
水が毒々しい色に染まっていた。
「何でこんなになったのかな?」
「そんなの決まってんじゃん!」
エミルは言う、
すると真っ平らだった水面が盛り上がるとこの湖の汚染の元凶とも言うべき存在が現れた。
『グオオオオっ!』
出現したのは紫色の鱗の肌、地面を踏むたびに地響きを上げる巨大な4本足、背中にノコギリの様な背びれ、まるで丸太をいくつも繋いだ様な尻尾、太く長い首に額に大きな2本の角が生え、ワニの様に大きく裂けた口の頭のモンスターだった。
そして画面にモンスターの名前が表示される、
「バシリスク、こいつが原因だったんだ」
よく分からないけど聞いた事がある、
確か竜の一種で猛毒を吐きだす事で有名なモンスターだ。
「よっしゃあ! 面白くなってきたぁ!」
「まぁ当然の事よね」
「……お約束」
エミルはトンファーを引き抜く、レミはメイスを肩にかけ、センリは杖を構えた。
「行こう、みんな!」
そして私は鋼の剣を引き抜くとバシリスクに向かって行った。
『グオオオォ――っ!』
大きく首を振りかざして猛毒のブレスを吐きだした。
でもそんな事はお見通し、
私とレミ、エミルとセンリが左右に分かれてブレスを回避すると私とエミルはバシリスクに跳びかかった。
「気合い斬りっ!」
「エミル・ろけっとぱ〜んちっ!」
私の渾身の斬撃、エミルがジャンプしてストレート・パンチを放った。
『ギャアアッ!』
バシリスクの首に私の剣、顔にエミルの攻撃がヒットした。
だけど攻撃はさらに続く、
「はああっ!」
レミがメイスを振りかざすとバシリスクの太い足を叩きつけた。
『ガアアア!』
バシリスクはダメージに顔を歪めると私に向かって口を開いた。ブレスを吐き出す気だ。
「させない」
センリが呪文を唱えると足元に魔法陣が出現、右手の人差指と中指に稲光が走った。
「ライザーっ!」
センリの指から稲妻が放たれるとバシリスクの顔面で爆発した。
『ガアアア―――ッ!』
バシリスクの巨体が揺れ動いた。
センリの魔法がバシリスクの猛毒攻撃を防いだのだった。
「ブレスは吐き出させなければ意味が無い、吐き出す寸前に魔法で防げば大丈夫」
「アタシ達のコンビネーションを見たか〜っ!」
「一気にたたむわよ!」
「うんっ!」
私達は得物を構え直して突進した。
だがその時、バシリスクの目が怪しく輝いた。
『グオオオォ―――ッ!』
バシリスクが大きく叫ぶと洞窟内が反響を起こし、天井がパラパラと崩れ落ちた。
「「「「くっ!」」」」
耳を劈く雄たけびに私達は一瞬ひるんだ。
だけどその瞬間を狙ってバシリスクは大きく息を吸い込むと背を曲げた。
途端鱗の隙間から紫色の猛毒のガスが勢い良く拭きだした。
「しまっ!」
私達はガスの勢いで吹っ飛ばされて地面に転がった。
「がはっ!」
ライフが少し下がっただけで大したダメージでは無かったけど、ステータスに髑髏マークが浮かんでいた。これは毒の表示だった。
紫色に染まったライフ・ゲージは少しづつだけど確実に減って行ってる、
「みんな! 解毒するわ! 順番づつ……」
レミが呪文を唱えようとした時だった。
バシリスクは体を反転させると太い尻尾を振るって私達をなぎ払った。
「「「うああっ!」」」」
バシリスクの攻撃で私、レミ、センリのゲージが一気に減った。
「みんなっ!」
エミルだけはスキルを発動させて無傷で済んだ。
だけど私達のダメージは大きかった。
そろそろ解毒しないとまずい、だけどレミが解毒魔法掛けようにもアイテムを使おうにも1ターンを1回使ってしまう、
だけど解毒しても毒の霧を受ければまた毒の状態になってしまう、
体力回復と解毒は同時に行えない、バシリスクの攻撃が激しくなってきたのでその隙が無い、
「ど、どうすればいいの?」
私が迷ってると私の体力が回復した。
振り向くとそこにはセンリがいた。
どうやらセンリが自分の傷薬を分けてくれたみたいだ。
「コロナ、今から私の言う通りに動いて」
センリは顔を青くしながら言って来た。
「そ、それって……」
「確実って訳じゃないけど…… パーティが全滅しない為にはこれしかないわ」
「だけど、もし失敗したら?」
「その時はその時、迷ってる暇は無い」
センリが指をさすとそこにはエミルがバシリスクと戦っていた。
エミルのスルー・スキルの成功率は50%、しかも防御力が低いので攻撃がヒットするとダメージは大きい、
いくら毒の状態じゃないとは言え戦闘が長引けば不利となる、
「私を信じて、古人曰く『和をもって尊しとなす』よ」
それって確か調和や力を合わせる事が大事と言う意味の聖徳太子の言葉だった。
だけど今はそれしか無いのも事実だった。
例えアバターと言えどもパーティ1人が消えてクエストクリアなんて後味が悪い、
「分かった。私やる!」
「頑張って」
センリが言うと私は頷いてバシリスクに向かって行った。