ねとげ~たいむ
「はぁ〜、びっくりした」
私は胸を撫で下ろしながら目の前に突き刺してある大鋸を見た。
ゲームの中で分かってる事だと言っても雷が落ちるとビックリするモンだ。
私がいるのはエミル達が戦ってる場所よりさらに上に登った所にあるぽっかり空いた空間だった。
学校の校庭の半分くらいの大きさだろう、周囲に大きく鋭く尖った岩の槍が並んだようなフィールドに避雷針の代わりに使った数々の私の武器を見た。
大鋸の他にファイア・ソード、海鳴りの鉾など普段から使ってる斬撃用の武器の他に錬金用に買ったバスター・ソード4本、鋼鉄の槍3本、鉄の斧3本を手当たり次第地面に突き刺してあった。
勿論ハンマー系もあるのだけど、地面に突き刺す事が出来なかった。
どうやら上手く行ったみたいだ。トルニトスに雷は落ちなかった。
私は下を見るとエミルが両手を振り、レミがメイスを肩にかけながら微笑し、センリは相変わらず無愛想だけど握った左手の親指を突き立てた。
私もエミル達に向かって上手く行った事に右手を振った。
一方、トルニトスは空に逃げようと翼を羽ばたかせた。
突風によりエミル達は動く事が出来ない、自由に動けるのは私だけだ。
「そうはさせない!」
私は振り返ってファイア・ソードを引き抜いた。
そして崖に向かって猛ダッシュ、空に向かって飛び出した。
「これで決める!」
私は心に決めた。
エミルもレミもセンリも皆頑張った。
それを無駄にしない為にも私が頑張らなきゃいけない!
私は落下しながら技コマンドを選択すると飛翔してきたトルニトスに向かってファイアソードを両手で握りしめて大きく振りかざした。
「メテオ・スラァアアァ―――ッシュッ!」
私は最後の技コマンドを選択する
唾元から切っ先まで勢い良く炎が噴き出して渾身の上段斬りが炸裂し、トルニトスを鼻先から下を一気に斬り裂いた。
『ギャアアアァァアアァァ―――ッ!』
トルニトスは断末魔を上げた。
切り裂かれた個所から炎が舞いあがるとトルニトスは火ダルマとなった。
私は弧を描きながら地面に降り立つとその直ぐ後に黒こげとなったトルニトスが地面に落下して画面から消えた。
「………」
本当の喜びと言う物は言葉では現す事が出来なかった。
それは皆も同じだった。
しばらく茫然としていた私達だったけど、やがて我に変えったエミルが大きく叫んだ。
「やったぁぁああぁぁああ―――っ!」
それにつられてレミとセンリ達も頬を緩めた。
「コロナ!」
レミが叫ぶと3人が私の元へやって来た。
その3人に私は笑顔で頷いた。
私達にもう言葉はいらなかった。
こうしてビギナー・ランク最後のクエストは終了したのだった。