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ねとげ~たいむ

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『ガァアアァァ―――ッ!』
 ほぼ暴走状態に近いトルニトスがエミル達に強化版サンダー・ブレスを吐きだした。
 エミル達は散り散りに別れてトルニトスのブレスを回避した。
「グラビティ・バインドッ!」
 センリが再び拘束魔法をかけた。
 地に足を付けているトルニトスはたちまち大地の鎖に束縛された。
 でも今回は動きを封じるだけじゃ無い、トルニトスが纏った雷が大地の鎖を通って地面に流れて行った。
 大地の鎖がアースの役目を担ってトルニトスから雷の鎧を打消していた。
「エミル!」
「うんっ!」
 エミルは頷くと技コマンドを選択した。
「チャージっ!」
 エミルの全身を青い光が包んだ。
 勿論レミも何もしない訳じゃない、トルニトス目がけて左手をかざした。
「ブレイク・ダウン」
 トルニトスを金色の光が包み込むと頭の上に盾に矢印の↓が重なったマークが浮かび上がった。
 相手の防御力が減った。
 途端大地の鎖に亀裂が生じて粉々に砕け散った。
 それを見たセンリは顔を顰めた。
「くっ…… 古人曰く、『柳の下にいつも泥鰌はいない』か」
 センリは悔しがった。
 ちなみにこの格言は1度成功したからって次も成功するとは限らないと言う意味だ。
 しかしその状況がセンリの思考を停止させてほんの一瞬反応を鈍らせた。
 普通の状態に戻ったトルニトスは大きく口を開けてセンリに向かってサンダー・ブレスを吐きだした。
「センリっ!」
「はっ?」
 レミに叫ばれてセンリは我に返った。
 でも時すでに遅し、センリはサンダー・ブレスを避ける事が出来なかった。
 普段ならここでコロナが庇ってくれる、しかし今ここにコロナはいない…… だけど庇ってくれる者はもう1人いる。
 レミはセンリの前に出ると防御魔法を唱えた。
「フル・ウォールッ!」
 金色の光の壁がレミ達の目の前に出来るとサンダー・ブレスを防いだ。
 でも前にこの魔法で防ぐ事の出来なかったサンダー・ブレスを同じ魔法で防げる訳がない…… 魔法障壁は再び砕け散り、レミは吹き飛ばされて地面に転がった。
「あぐぅ!」
「レミっ!」
 センリはレミの側によって片膝を付き、頭からつま先まで見回した。
 大分HPは減ってはいるようだが致命傷になる程のダメージは負って無い様だった。
 僧侶は戦士・武闘家と比べてHPは低いが防御力は武闘家より上、それに直撃では無い上にラバー・マントと防御魔法のおかげリタイヤにはならなかった。
 すると体を起こすレミにセンリが言った。
「ごめん、私の責……」
「……アンタも随分気にするタイプね。心配無い言ってるでしょう」
 レミは苦笑しながら言い返した。
 そしてある方向を見ると口の端を上げた。
「私らはサポートが役目、あいつらの準備できただけでも上出来よ、エミルっ!」
 レミはエミルを見る。
 するとエミルは両手を鳴らすと強く地面を踏みしめた。
「みんなのチャンス、アタシが繋ぐっ!」
 エミルは走り出した。
 猛スピードでトルニトスに一直線に向かって行ったエミルは技コマンドを入力する。
 そして両足を揃えてジャンプすると強く握った右手に青い光が集まった。
「エミル・パアアァァ―――ンチ」
 渾身の正拳突きが炸裂し、向かって左側の角をへし折った。
 さらにエミルの攻撃はまだ続く、エミル…… と言うより武闘家専用の追撃スキルがある。
「スキル発動っ!」
 エミルはプラスアタック・スキルを発動した。
 エミルは体を捻ると右足振るって右の角を攻撃した。
 そして右の角も完全に大破! これで雷を自分の元へ呼ぶ事は出来なくなった。
「随分ストレートになったわね、ネタ切れ?」
「古人曰く『過ぎたるは、及ばざるがごとし』、何事もほどほどが言い」
「simple.is.best…… いや、面倒になっただけか」
 レミはエミルに向かってため息を零した。
 エミルの活躍で相手は雷を引き寄せる事が出来なくなった。
 しかし雷を呼ぶ事は出来る、落雷自体はランダムにフィールドに降り注ぐが、もし偶然にもトルニトスの頭上に落ちればまた同じ事の繰り返しだ。
『グォォオオオォォ―――ッ!』
 トルニトスは天に向かって叫んだ。
 すると再び暗雲の中で稲光が輝き、轟音を立てながら雲の中から稲妻が降り注いだ。
 だが今回は全てトルニトスの周囲に落ちる事は無かった。なぜなら……
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki