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ねとげ~たいむ

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 そもそも雷の発生原理はまだ解明されていないらしい。
 一般的には大気中で大量の水蒸気が集まって雲となり、それが冷え固まってプラスとマイナスの氷が出来上がる。
 プラスの氷は上に行き、マイナスは下に行くと言う、まるで巨大な磁石の様になった氷の粒が擦り合ってぶつかり合い、地面に落ちた現象が雷だと言う。
「雷って言っても色々ある、低気圧や台風などで作られた雲で作られる『渦雷』、急激な上昇気流で作られた積乱雲(入道雲)などで夏の午後辺りに多くみられる(夏に起こるから夏雷とも言われる)『熱雷』、原理は同じだけど寒冷前線に沿う上昇気で流発生時間や通過時間も関係ない『界雷』、でも熱雷と界雷の条件が複合してる物も多いからこれは『熱界雷』と呼ばれる事もある」
「へぇ、そうなんだ」
「私ら雷に付いて何も知らないも同然ね」
 レミは左手を腰に当てながら感心した。
 私も大変勉強になった。
 そして1番知りたがっていたエミルに尋ねた。
「エミル、分かった…… ってエミルぅ?」
「???」
 何とエミルは腕を組みながら顔を顰めて首を傾げ、さらに頭から煙を噴きながら沸騰していた。
 何とまぁ、分かりやすい……
「アンタね……」
「エミル、ようするに昭和バイカーのストロングーみたいな物、あれも落雷の原理で変身する」
「あ、なるほど!」
(それは分かるんだ)
 ポンと両手を叩くエミルに私は苦笑した。
 1つお利口になった所で、こいつをどうするかだ。
 まず体を覆っている雷の鎧を引きはがす必要がある、でも相手はこの状態だと攻撃を引きつけない。
「私に考えがある、雷の鎧くらいなら引き剥がす事はできる」
「ホント? センリ?」
「ただまたやられるだろうけど」
「あいつが雷呼んだら振り出しに戻るわね」
「雷を呼ぶ? ちょっと待って!」
 私は言った。
 ようするに雷を呼ばなきゃ良い訳だ。
 奴は辺り一面に雷を呼んで額の角を発光させて呼びよせていた。
 つまりあの角を破壊すれば良い訳だけど、時間が長引くと厄介だ。
 その間に再び雷の鎧を纏われたら水の泡だ。
「雷を別の所に落とせれば良いんだけど、避雷針でもあればなぁ……」
「避雷針?」
 するとレミが言って来た。
「……そう言やコロナ、アンタ色んな装備作ってたよね?」
「え? うん、一通り属性付き装備は持ってるよ」
「だったらさ……」
 レミは耳打ち際で話して来た。
「えっ? できるかな?」
「やろうよコロナ! 面白そう!」
 エミルは乗り気だった。
 でも1つだけ気がかりな事がある、それは私が抜ければ防御は誰がやるかだった。
 防御力とHPの高い私だからこそガード・スキルで皆を庇う事が出来る、しかもこのスキルを持ってるのはこのパーティじゃ私1人だ。
 私が抜ければこのパーティの防御力は大幅に下がってしまう、下手すれば誰かがリタイヤとなり、1人だけビギナー・ランクに残されたままになってしまう。
 するとその事を察したのか、レミが微笑しながら自分の胸に親指を突き立てて言って来た。
「後の事は任せなさい」
「レミ?」
「私だって防御魔法使えんのよ、コロナがいない間は私が何とかしてあげるわよ」
「で、でも完全に防ぐ事は出来ないでしょ? 実際相殺された訳だし」
「別に少しくらいダメージ負ったって死にはしないわよ、私だって伊達にレベル上げてる訳じゃないんだからさ…… 少しはお姉さんを信じなさいな」
「随分年行ってるけど?」
「おい……」
 レミはエミルを睨みつけた。
 久しぶりに鬼と化したレミを見てエミルはガタガタと震えだした。ホントに毎度毎度懲りないなぁ……
 でも不思議とこのメンツならやれる気がして来た。
 考えてみればいつもの事だ。
 いつもギリギリで出た所勝負が多かったけど、皆がいたからやって来れたんだった。
 一々失敗なんか考えても仕方が無い、ダメならダメでまたやり直せば良いだけの話だ。
「よし、じゃあやろう」
 私が力いっぱい頷くと皆も頷いた。

 私は皆と別れて走り出した。
 ここは山頂ではあるけどまだ上に行ける道がある、私は坂道を駆けあがった。
 振り向くとそこではエミル達がトルニトスを引きつけてくれていた。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki