ねとげ~たいむ
そんな話をしながら私達はついに山頂へやって来た。
後ろを見ると遠くの方に研ぎ澄まされた剣の様に聳える山脈が並び、目の前にある急斜面の崖の上には今回私達のターゲットとなるモンスターが姿を現した。
全身緑色の鱗に包まれ、大きく裂けた口に牙が並び、爬虫類特有の2つの目、額には3本の角、長く太い首から巨大な胴体と蛇の様に長くしなる尻尾まで一直線に大小無数の棘が生え、背中には大きな蝙蝠の様な2枚の翼、鋭く人間の腕ほどもある3本の爪が生えた逆関節の4本の足のドラゴンだった。
ドラゴンは2枚の巨大な翼を広げて飛びあがると、稲光を放つ暗雲の中を泳ぐかのように飛びまわり、やがて私達の前に降り立った。
『グォォオオオォォオオオ―――ッ!』
モンスターは大きく咆えた。
それに反応するかのように空の黒雲が眩く輝くと暗雲の中を稲妻が蒼白くスパークし、無数の落雷が私達の周囲に降り注いだ。
そして画面にステージ・ボスの名前が表示された。
『トルニトス』
ビギナー・ランクとは言えまさにラストを飾るに相応しいモンスターだった。
ちなみにトルニトスと言うのはラテン語で雷と言う意味らしい。
「やっぱラスボスだけの事はあるわね、すごい迫力だわ」
「相手にとって不足無しぃ!」
「古人曰く『叩けよ、さらば開かれん』!」
「最後のクエスト、絶対に負けられない!」
レミはホーリー・メイスを肩にかけて苦笑し、エミルは新たに作り出したアイス・ナックルを装備して握った両手を合わせ、センリはマントを翻すと雷鳥の杖を構え、私もファイア・ソードを引き抜いて切っ先をトルニトスに向けた。