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ねとげ~たいむ

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 戦いは終わった。
 エミルは大喜びで両手を上げ、レミはメイスを肩にかけて安堵のため息を零し、センリは微笑して右拳の親指を突き立て、レイさんは私に向かって拍手を送った。
 画面が切り替わるとゴーレム・コアは無くなり、怯えた表情のニコラスが現れた。
 ニコラスはやがて全身を震わせると腰を抜かしてその場に尻餅を着いた。
『そ、そんな、まさか……』
「あ〜、そうそう、こいついたんだっけ……」
 エミルは顔を顰めて言った。
 折角クエスト・クリアの余韻に浸ってたのを台無しにされてムッと来たんだろう。
 正直私もこんな小悪党どうでも良かった。
 だけど私達のクエストはこいつを捕まえて来る事だ。
「ま、エンコ程度じゃすまないわよね」
「古人曰く『身から出た錆び』」
 レミは目を吊り上げ、センリは両肩を落とした。
 勿論エミルとレイさんも同じだった。
「フルボッコ確定〜っ!」
「punishmentでありんす!」
 そう思うよね、勿論私もだ。
 私達がニコラスに向かって踏み出したその瞬間、突然足元がぐらついた。
「な、何よっ?」
 レミは周囲を見る。
 すると部屋中が赤く点滅し、ブザーが鳴り響いた。
『魔力回路破壊、ゴーレム崩壊まであと3分』
「やばっ、これって自爆っ?」
「崩壊と自爆は違うと思うけどな……」
 私は苦笑する。
 自爆はそれこそ木っ端微塵に大爆発して周囲に莫大な被害を与えるけど、崩壊はただ崩れ落ちるだけでさほどの被害は無い、どちらにしろ中にいる私達はゲームオーバーだ。
 そんな事を考えているとニコラスはパニックになって叫んだ。
『うわぁああっ! た助けてくれぇ―――っ!』
「……自分がピンチになると何もできない奴だね」
「ったく男のクセに…… 玉ついてんのかしらね?」
「レ、レミ! 女の子がそんな事言っちゃ駄目だよ!」
「何言ってんの、肝っ玉でしょ?」
「ええっ?」
 私の顔が赤くなった。
 どうやら私は別の事を想像していたらしい。
 するとレミは私の考えを察したのか、目を細めてにやけながら言って来た。
「あらあら、何ぁに? 一体何を考えたのかしらね〜?」
「ううぅ〜っ」
 私は恥ずかしくて肩を窄めた。
 するとセンリが頬を赤くして咳払いをしながらレミに言った。
「レミ、セクハラ」
「あら、何よ? コロナだって年頃なんだから、別にそれくらい普通でしょ?」
「え、何々? 一体何の話?」
「エミルサン、それはいずれ分かるでありんすよ」
「ああっ、もう、この話し無し無し! 早く逃げようよ!」
 私は話を反らした。
 
 私達はニコラスを連れて来た道を逆走した。
 でも所々で爆発が起き、天井等が崩れ落ちて来る為に塞がれている道も多く、周り道をしなければならなかった。
 しかもモンスター達も健在だった。
 だけどただ現れるだけじゃ無い。
「ったく、このクソ忙しい時に……」
「でも同士撃ちしてくれてるのは助かるよ」
 私は言った。
 出てきたモンスターの中には頭の上に黄色いナルトのような渦巻が浮かんでいた。
 これは混乱の状態だった。
 恐らくゴーレム・コアが壊れたから制御を失ったって設定だろう、でも戦闘中でも時間が減るから面倒なのは否定しなかった。
「センリ! 脱出魔法とか無いの〜?」
「古人曰く『無い袖は振れない』」
「早い話しが無いって事ね」
 レミは眉間に皺を寄せた。
 仕方ないので私達はマッハで階段を降りて行った。
 そしてついに出口まで辿りついて表に飛び出した。
「ま、間に合った〜」
 エミルは振り返りながら言う。
 崩壊まで残り10秒を切っていた。
 
 画面が切り替わるとムービーとなった。
 ゴーレムのあちこちが爆発して黒い煙を上げると音を立てながら瓦礫となって崩れ落ちた。
 これにてクエスト終了だった。
 それと同時にnow・loadingとなった。
 待つ事数秒、私達はお城の王の間に立っていた。
 そしてクラウド王が出迎えてくれた。
『冒険者達よ、よくぞ我が国を救ってくれた。まさか我が軍が戦いの準備をしている間にニコラスを捕えてくれるとは思ってもみなかった。この国を代表して礼を言おう』
「結局自分は何もしてないクセに」 
 エミルは口を尖らせた。
 でも『戦いの準備をしていた』って事は私達があの中にいたら一緒に攻撃してたって事になる。
 外側からじゃ壊れる事は無いかもしれないけど、私達ごとゴーレムが木っ端微塵にされる……
「何だか嫌な事想像するなぁ……」
「考え過ぎでありんす」
 隣に立っていたレイさんは私の右肩に手を乗せた。
『ニコラスと手を貸した者達は裁判にかける事になる、しかし悲しい事だ。我が国の宰相ともあろう者が私利私欲にかられて国を滅ぼそうとするとは……』
 クラウドは肩を落とした。
 自分の部下が悪事に走った事に心を痛めてるんだろう、ゲームのキャラクターとは言え少し可哀想だった。
『何にせよご苦労だった。諸君等には約束通り賞金と報酬を授けよう、受け取ってくれたまえ』
 クラウドがそう言いながら指を弾いた。
 途端天井から5つの宝箱が私達の前に落ちて来た。
 蓋が開くと中に入っていた物が私達の道具コマンドと金額コマンドにプラスされた。
作品名:ねとげ~たいむ 作家名:kazuyuki