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引きとめられた夜(改題)

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 また急ブレーキになった。更に細くて暗い道に入らされた。塀に衝突しそうになったが、奇跡的にそれは免れた。もっと早く云って欲しいと、私は思ったが、黙っていた。
「この野郎!殺す気か。ふざけやがって、てめえの運転のせいで気持ちが悪くなったぞ。どうしてくれるんだ」
「申し訳ございません。運転が未熟なもので、ご迷惑をお掛けして……」
「止めろ!。頭に来た。ここで下りるぜ。明日、一緒にタクシーセンターに行ってもらうからよう。幾らだ」
「料金は結構ですので……」
 一気に恐怖感が増した。
「バカ野郎!千二百五十円だろ。そのくらい払えるんだ。バカにすんじゃねえ!払うからよ、領収書を寄越せ!」
「はい。わかりました。はい、ちょうどのお支払いですね。こちらが領収書でございます。ありがとうございます」
「おい。逃げるなよ。車から出てもらうぞ」
 かなり俊敏だった。下車した乗客は極めて短時間のうちに運転席の横に現れ、ドアを開けて私の腕を掴んでいた。
「早く表へ出ろ!」
 私は外へ引き出され、車の後部へ引張られて行った。胸をドンと突かれ、もう一度やられながら、相手の体躯が頑健そうなことに感心していた。柔道でもやっていそうな身体つきだった。