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セールス・マン
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プリンス・プレタポルテ

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 白と青のワンピースを風に揺らすビーの姿。ケーキを前にした子供のような表情で世界を見つめる目には、繁栄したヨーロッパの名残も憂鬱な午後の日差しも、等しく麗しげに映るのだろう。何せ彼女は若い。醜いものを見たことが無ければ、表現の仕方もわからない。それがどれほど幸福で素晴らしいことであるか彼女は知らない。その無知も全てひっくるめて、私は彼女を愛していた。

 可憐なビー。今はプールサイドでクバ・リブレでも飲んでいるのだろう。細い指をマドラーに絡ませ、すっと伸びたまだ肉もつききらない脚を水着から突き出して。小さなつま先を水に浸し跳ね上げる、その飛沫すらもが目に浮かぶ。離れれば離れるほど、君の姿は強く胸に突き刺さる。コーラが好きだと言う子供っぽさ。ホワイト・ラムの味もその名の意味も、覚えているだろうか。私のことを、覚えているだろうか。


 陽は二度と昇らず、ドン・ファンの本当の末期は恨みを買った石像に地獄へ引きずりこまれる。


 それでも、ビー、私は君を愛している。私のマリアン。私のエリザベス・カスター。君のためならば、忠誠を誓うおとぎ話の騎士にでも、勇敢な騎兵隊の将校にでもなってみせる。
 だからどうか、私のことを忘れないでくれ。愛してくれ。