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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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 井田がこちらを向いて手を小さく降る。昔から好きだったという合図なのか、ただ単に挨拶をしているだけなのか井田の笑顔を見ると、あの切ない甘酸っぱい時代に一瞬だが戻った。
「よっ、美香」
中学時代はみんな名前を呼び捨てで呼び合ってた。ただ、それだけなのに美香は夫・健三以外から呼び捨てにされるのに新鮮な驚きが湧き上がった。男から呼び捨てにされるのはどこか体の一部を許した関係のようだったからだ。考え過ぎかもしれないが久しぶりに男性を意識したのは確かだった。
「久しぶりね一博」
美香もまた夫以外を下の名前で呼び捨てにするのは久しぶりだった。なるべく男を意識してないように、悟られないように、そしてなにより健三に気づかれないように返事をした。健三が気付く筈はないが自分が意識した分なんとなく、変化に気が付くのかもと心配した。

 井田は健三の脇を抜けると、美香に近寄り軽く抱擁した。井田にとってはただの挨拶かもしれないが有田夫妻にとっては日常からかけ離れた光景だったので、少し二人の間にさざ波が立った。
「久しぶり〜」
一博は軽い抱擁を解くと美香の肩をポンポンと叩いた。一博にとっても実は美香に触れることはうれしい目的だった。あきらかにやましい心は少し持っていた。結婚式の借りを少しでも返せたかもしれないと思ったかはわからないが、健三に試合開始のパンチを最初に浴びせたのは一博の方だった。
 健三はそこまで深い考えは持たない・・いや持てない性格だ。ただ、単に懐かしく一博が美香を抱いてるだけの事だろうと、ただ見ていた。それが健三だった。

「ねぇ〜一博太ったわね」
「そうか〜貫禄が出てきたと言ってくれよ」
「なんだかお金持ちそうでいやらしい・・悪いことしてない?」
「お金はあるけど、別に健全な夫だ。何も悪いことはしてやしね〜よ」
「夫?結婚したの?」
「ああ、10年前、2度目の結婚」
「2度目〜〜?一度は離婚したのは知ってるけど、またしたの〜?」
「ああ、恥ずかしながら・・」
「へぇ〜〜、どんな人?」
「君らが知ってる人」
「えぇ〜〜」美香は大きな声を上げて本当に驚いた声を出した。
その声につられて近寄ってきた健三は「誰なんだぁ〜」と笑いながら聞いた。
「ちょっと待ってろよ」と言うと、大広間の方に駈け出して行った。
美香と健三は顔を見合わせて「誰なんだろね、まさか同級生とか・・」と健三が言った。
「待ってろって言って、行ったからもしかして同級生?」
二人でどんな彼女が出てくるのか、興味津々だった。
受付でその間、会費の7000円を払い名前を書いた。