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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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 ホテルに帰りシャワーを浴びた加奈子は健三の帰りを待った。ベッドの横になり目を閉じると先ほどの花火が浮かんできた。何度思い出しても興奮する。健三側の壁を見てひとりにやついた。それから鏡の前に座ると念入りに化粧をしだした。今日は気分がいいから大サービスだ。
 健三からの電話は11時を過ぎてかかってきた。今日の片づけは終えたらしい。部屋に帰りシャワーを浴びたら出て行こうと言ってくれた。加奈子は待つことにした。
 健三の部屋のドアが開く音がした。静かなホテルの中で耳を澄ますと健三の部屋から物音が聞こえるようだった。シャワーの音だろうか・・加奈子は想像することで健三を楽しんだ。
 そろそろ終わる頃かと思い、加奈子は1階のロビーで待つことにした。健三は中井を連れてエレベーターから降りてきた。
「お待たせ。中井も来たいって言うから連れてきた。いいだろ」
「ええ、ぜんぜん・・」ちょっとがっかりして加奈子は笑顔を作った。
 その日の居酒屋の夜は加奈子の感動話で盛り上がった。
 健三も中井も大袈裟に褒められると照れたように恥ずかしがった。
 そのうち中井は健三が花火作りにいかにストイックに打ち込んでいるか、尊敬しているか惚れた女のように加奈子に説明し始めた。
「男が男を好きになるなんてわかりますか」と加奈子に聞いて来るもんだから、加奈子も
「私も健ちゃんが好きなのよ」と中井の前で言ってしまった。
 中井は賛同を得たように得意になると何回も乾杯を繰り返し、加奈子に酒を注いだ。加奈子もまた気分良く受け取った。


 二人でどれだけ飲んだだろう、中井も加奈子も相当酔ってしまったのでホテルに帰ることにした。
 健三が加奈子に肩を貸し、抱きかかえる様に連れて帰った。足元はふらついてるくせに加奈子は中井に喋り続けた。3人でホテルに着いたときは加奈子はフラフラだった。狭いエレベーターで上がり、
「じゃ、明日も8時にな」と言って、健三は中井と部屋の前で別れた。
「健ちゃん、こっちで泊まってく〜」酔った加奈子が健三に言った。
「馬鹿言うな。明日はお昼の3時頃帰るからゆっくり寝てていいぞ」
「え〜、つまんない。意気地なし」
 健三は酔った女は面倒だと思いながら加奈子を加奈子の部屋に入れた。そして自分は自分の部屋に戻った。急に酔いが回ってきた。健三はベッドに倒れ込んでフゥーと息を吐くと解放感に浸った。
 ドンドン・・加奈子が壁を叩いてきた。うるさいが無視してると壁を叩く音は小さくなりやがて聞こえなくなった。そしてそのまま健三も眠りについた。

 そして翌日、加奈子は健三のトラックに乗り地元の高田町まで揺られて帰った。
健三との時間はあっという間に過ぎてゆく。
 改めて健三の事を知りたくなった加奈子は車の中でいろいろ話を聞いた。美香とのことや結婚生活の事を。健三はなかなか喋らないが加奈子は知りたがった。好きになることは、すべてを知りたいと興味を持つことだ。そして知れば知るほど、自分の心の隙間に健三というピースを埋めていく事になる。
 地元に着く頃には加奈子の心の隙間は健三で埋め尽くされていた。
 加奈子は健三をますます好きになっていた。

 健三は加奈子が駐車していた駅まで送り、その後、会社で後片付けをして自宅に戻った。時間は午後11時を過ぎていた。
 自宅には美香がいた。