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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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 その頃、加奈子と健三は二人ともまだ足湯に浸かっていた。
「ねぇ気持ちいい?」加奈子が聞く。
「あぁのんびりして最高だ」
「気にならないの・・・あの二人?」
「別に・・・なんかあるのか?」
「初恋同士なのよ」
「そうなんだ・・何故知ってんだ?」
「昔聞いたことがある」
「お前が気になるのか…なら、なんで二人行かせたんだ?」
 加奈子は「あなたといたいからよ」と言いたかったのだが、
「どうにかなったら面白いかな〜と思って・・・」と言った。
 健三は加奈子の顔を見て
「七面倒くさいことが好きなんだな」と言って、
 足湯からすっかりふやけた足を上げた。
 タオルで拭きながら
「なにかあると思うか?」と言った。
「・・・・別に・・・ないかな・・・」
「なら、いいじゃね〜か。ただの同級生だ」
「ふ〜ん・・・」加奈子も足を上げて拭きだした。それから
「ねぇ〜、健ちゃんちは仲いいの?」と聞いた。
 健三はどうしてそんなこと聞くのかという顔をして
「普通だ。ただの平凡な家庭だ」と言った。
「今でも好き?美香のこと」
 加奈子が真剣に聞くもんだから健三は嘘をついた。
「ああ、好きに決まってるじゃないか」
 
 本当は好きなんて考えは、とうに失くしていた。どうでもいい世界だった。家庭の中で一緒に生活するのは「好き」じゃなければできないというもんでもなかった。反対にいちいち気にしてたら落ち着かない。当たり前の空気でいいと思っていた。
 朝出かける時に返事をしなかったり、夜帰ってきても無視したり、やってることと言ってることが自分でも違うのを思い出して、ばつが悪かった。
「へぇ〜、うらやましいな・・・私の所は全然ダメ」
「一博が遊ぶからか?」
「もう浮気ばっかし」
「そういう病気なんだよ。看病してやれよ」
「男は浮気して当たり前なの?じゃ、健ちゃんもしてる?」
「俺は興味がない。仕事ばっかりだ。女心は苦手だ。だから平凡でいい」
「美香はそれでいいって言ってるかしら・・・」小さな声で加奈子は言った。
「ん、何か言ったか?」健三が加奈子を見た。
「いいえ、別に・・・男ってわがままなのね」
「そうか・・・仕方ないんじゃないか」健三は足湯の場所から遠くを見ると、
「あそこにお城がある。あそこ行ってみようか」と指差し加奈子に言った。
 加奈子はほんとにこの人は恋愛ってどうでもいい人間なんだと思った。しかし一博と違ういい所はこの真面目一直線のひたむきさかもしれないと思った。女と違う人種。女はいつも好いてくれてるのか?愛はあるのか?と心の中を見たがるが男は見せたがらない。加奈子は健三に男を感じた。