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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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「加奈子はまだ怒ってるのかなぁ〜」美香はなんとなく聞いてみた。
「どうだろう、あきれて、冷めてるのは確かだな。愛があったら感じるからわかる」
「へぇ〜、わかるんだ」興味深く美香は一博の顔を見た。
「俺は誰よりも愛をいち早く察知する。好いててくれてるか・・・」
「それで女を選ぶ?」
「その通り、慎重派だ。ははっ」
「そして加奈ちゃんには今は愛はない?」
「ああ、絶対。一緒に住むのに愛はいらないしお金さえあればいいと思ってる」
「そんな〜言い過ぎじゃないの」
「言い過ぎかもしれないけど、俺たちにもう愛がないのは二人ともわかってる」
 美香は自分と健三をだぶらせた。
「でも、今回みんなと旅行に来たのはなぜ?」美香が聞いた。
「美香と一緒に話したかったからさ。なんせ初恋の彼女なんだから・・・」
 一博が美香の手を取った。しかし、美香は振り払うように手を放した。とっさにだった。
「そうやって、いつも女を口説くのね。口がうまいんだから」
「ばれたか・・だけど初恋は美香だけだ」
 一博は美香に背中を向けてその場を歩き出した。
 告白して背を向ける。それは照れなのか作戦なのか一博の行為はいちいちどこか人間を引き付ける。
 
 一博の背中は中学生のころより当たり前なんだろうが大きくなっていた。それは心の中を簡単に見せたり、そして気にさせたり大人の行動が伴うからであろうか。背中で人生を語るわけではないが、きっと今までいろんな人生を歩んできたんだなと美香は思った。


 どこに行くあてもなく歩き出す。だけどどこでもよかった。二人で会話することが目的だったからだ。知りたい心は増していく。それは好きになればなるほど気にすればするほどもっと話したかった。
 美香は知らない街の静かな遊歩道を一博と歩いた。
 少し前を歩く一博に追いつくと、今度は自分から進んで一博の手を取り腕を組んだ。そして、しばらく黙って歩くのだが心の中は揺れていた。幸せな気分で揺れていた。
「もっと話したい。もっと知りたい」二人の心は急速に近づいた。

 歩道の横の綺麗な用水路には色とりどりの鯉が泳いでいる。
 商店街に差し掛かるとアーケードの中には端午の節句に飾られる鯉のぼりが所狭しと泳いでいた。しかし鯉のぼりの派手やかさとは裏腹に商店街のシャッターは閉まり閑散として、開いてる店はわずかの数軒だった。ここも平成の大型店に押しやられ昭和の時代を残す場所となってしまっていた。
「あら、もう繁華街はおしまい?」
「どこもこういう田舎の商店街はもう終わりなのさ」
「そう、なんだかさみしいわね」
「時代は変わる・・変わらないのは思い出だけだ。俺たちも皺は増えたしね」一博が言うと、
「白髪も増えたわよ・・」と美香も軽口を言った。」
「どこに・・・?」
「いやだ〜言うわけないでしょ」
「言えない所にあるんだ」
「もぉ〜〜」
 温泉街の商店街を抜けると、鉄筋コンクリートの4階建てのラブホテルが目の前にあった。
どうしてこんな所にという所にあった。