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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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「美香はお酒飲むの?」
「飲めるのは飲めるけど、家でたまにビールを飲むくらい。外で飲む機会がない」
「健三はまじめだもんな。一緒に行くなんてないだろ」
「そう、一緒に飲みに行くなんて今まで1回もない。でもそれが普通じゃない?」
「普通?」
「何かの集まり以外は嫁と一緒に外出することはない・・そうじゃないの?」
「そうかな、俺たちは最初の頃よく飲んでたぜ」
「昔はでしょ!」美香は想像してぷっと膨れた。「今は怖いくせに・・・」
「そうだな・・本当は夫婦で仲良く飲みに行けるのがいいのかもな・・・」
 一博も美香も理想の夫婦像というのを追いかけてみたが、それは誰かが作ったイメージなのかもしれない。コマーシャルのような良き家庭、良き夫婦像。だけど、やっぱりそうしたいという気持ちがどこか残ってて引っかかる。古い昭和生まれの人間だからなのだろうか。

「そうそう、どうやって加奈子と知り合って結婚したの」
 美人でない加奈子を一博が選んだ訳を美香は聞きたかった。
「加奈子か・・・37歳だったかな会ったのは。ちょうど俺が離婚して落ち込んでた時会ったんだ。久しぶりだから最初はわからなかったんだ、ほら、あんまり目立つ子じゃなかったし。あいつああ見えてもやさしくてな、すごく親密にしてくれたんだ。そのうち情にほだされたというか、こいつだったら俺に尽くしてくれそうだからと、その気になってしまった。で1年くらい付き合って再婚したんだけど、ほら俺の浮気の虫が暴れだし・・・」一博は遠慮気味に笑う。
「浮気男は自分から家庭を壊そうとする。どうしてかわかるか?」
「・・・・」
「自分で反省を込めて言うけど、落ち着くのが嫌なんだ。ずっとそこに縛られるのが嫌になってくる。愛してもらうのは嬉しい。やさしくしてもらうのも嬉しい。だけど、同じ場所にいることがどうにも嫌になってくる。彼女が嫌いなわけじゃないけど環境を変えたくなる。特に俺は人と違ってるし、なんでも突っ込みたいタイプだし、馬力を持て余してんだ。特にあの頃は若かったし・・・病気みたいなもんだ・・・」

 美香は一博の言うことを黙って聞いていた。
 昔の中学生のころの一博の性格そのままだが、やっぱり大人になってることに気が付いた。
「でも、だからって浮気に走るのは誰でも女は許さないよ・・・」
「ああ、わかってる。だけどあの頃は仕方なかった。それしかできなかったから・・・」
「今はもう浮気してないの」気になる部分だった。
「言ったろ、45歳までだって」一博は笑う。
「もう、最近は女遊びはしてない。ただ家にいたくないだけだ」
 美香は一博の横顔を見ながら、ふぅ〜とため息をつき
「みんな、素直になれないねぇ〜」と言った。
 その言葉に二人とも、自分の家庭の蓄積を合わせて見た。
 つくづく・・・どこも・・・。