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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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 一博は美香がどこに行くのかもわからず、とりあえず後をつけた。足湯の場所が見えなくなる角を曲がると美香は少し歩速を緩めた。多分ここから先は健三の見えない範囲だと安心したのか美香はついて来てるであろう一博の方を振り返り、健三には見せない笑顔を見せた。
 ちょっと老けたかもしれないが昔、一博にも見せていた笑顔だ。
 顔立ちのいい美香が笑顔を見せるとどんな男だって嬉しくなる。美香はさらにいい笑顔を一博に見せようと普段以上の表情をした。
 一博は先日の同窓会の時より、自分の為にだけに笑ってくれる美香の笑顔を見て嬉しくなった。

 よこしまな気持ちは彼女をホテルに誘って抱きたいからだけじゃない。いや最終的には心のどこかに持っていたが、純粋に好きだった昔の女の子にもう一度心ときめかすこと自体が自分でも心地よかった。
 好きだった昔の恋人に再会する、それも二人きりで…こんな心ときめくシチュエーションはなかなかない。中学以降いろんな女性と付き合った一博だがやはり初恋の彼女というのは別格だった。
 
 渡したラブレターの好きか嫌いかの返事ももらわずそのままだったから、何かと結果を求める一博は今更ながら美香をもう一度振り向かせたいという願望がどこかにあった。
 振り向かせたい、自分のものにしたい。たとえ親友であり同級生の妻という肩書があっても一博には関係なかった。欲張りな男はいくつになっても欲張りなのだ。また、そういう欲望をかなえようとするパワーがある人間ほど仕事も金儲けもうまい。そして口先もうまい。

 一博は笑顔を向ける美香に言った。
「なんだかずいぶん健三から離れたがるんだな」
 健三と美香の温度差の確認の言葉だった。
「うちの旦那もう、暗くてさ… 一博みたいに喋る方じゃないし。最近ますますうっとおしいの」
「おう、おう、いきなり悪口かよ…」
 一博はやっぱりと思い、その方がいいと思った。
「加奈ちゃんは心配じゃないの?」
 美香も一博と加奈子の生活を探りたかった。
「最近はひねくれてさ、意外とああ見えて家では怒ってばっかしなんだ」
「怒って・・? 一博がなんか悪さでもしてんじゃないの?くくっ…」
 牽制球を投げる美香。
「別に悪さはしてないさ。更年期障害て言うやつか?」
 ほんとはちょくちょく悪さはしていたからばつが悪かった。
「あら、ひどい。なんでも更年期で片づけたいのね。男だって来るのよ」
「へぇ〜男の更年期ってどんなんだ?」
「勃たなくなるとか… 」言ってしまった後、美香はまさか自分がそんなこと言うなんてと恥ずかしくなった。
 実際は男の更年期というのを詳しく知らなかったからなのだ。
 美香は一博から目をそらした。
「はっはっは、いや〜美香も大人になったなぁ〜。中学生の時にこんな話題はなかった・・ははは」
 一博は美香の方から一瞬誘っているのかと思ったくらいだ。
「まだ、俺は立派に勃つよ…おかげさまで」
「やだ〜 なんだか恥ずかしい」
 本当に恥ずかしかった。心のどこかに期待してるものがあったのだろうか。あの派手な下着を握った時から考えていたのかもしれない。