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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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 美香は予想通り夜の7時少し遅れて帰宅した。健三はまだ帰ってなかった。残業だろうか。
 美香は朝作った自分の分の食事をチンすると一人でテーブルで食べた。子供がいなくなってずっと一人で食べてるような気がする。
実際は健三と二人一緒に食べているのだが言葉を交わさないので一人で食べている気がするのだ。ひどい時は寝る時まで、いや1日中言葉を交わさない日もあった。健三がもともと喋る人間でないから仕方がない所もあるが、さすがに三日も続けると淋しさが増した。だから。ようやく美香も重い口を開く。
いつから私はこんな無口な女になってしまったんだろう、美香は自分のことなのに他人事のように考え、ただボォ〜とテレビをまた見るのであった。
 その日、健三は10時くらいに帰宅した。一人で食事をチンしてシャワーを浴び、テレビの前に座った。美香は明日のことがあるので確認した。
「明日の旅行なんだけど、わかっているわよね」
「ああ」
「下着とかは用意したの?」
「いいや」案の定の答えだった。美香はそれを見越してすでに用意は済ませていた。
「服は何を着ていくの?」
「そうだな・・・」それ以後、返事が続かない。
「あなたの寝室に用意してるから、それを着て行ってね」
「ああ」
「わかった?」
「ああ」
本当に行く気があるのだろうか、仕方なくの返事はわかるけど気のない返事に美香は心配になった。
テレビを見てる健三を覗くと半分寝てるみたいだ。とにかく明日起こして車に乗せれば付いて来るだろう。いや付いて来てもらわなければ私は遊べないのだ。
 ため息交じりに健三がいる居間のドアを美香は閉めた。テレビの天気予報は晴れのち曇りと言っていた。自分の部屋に戻るとベッドに横になった。静かな静かな家の中で少しだけテレビの音が聞こえた。