小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

十六夜(いざよい)花火(前編)

INDEX|10ページ/66ページ|

次のページ前のページ
 
 
 健三はクラスの中ではそんなに人気者ではなかった。勉強ができるだけのただの男だった。だから、今はお姫様の横につくおまけみたいなものだった。「なんであいつと・・」やっかみの言葉を誰かが言ってたかもしれない。しかし、武骨な健三はそんな空気も読めない。だからこそ良かったかもしれないのだ。マイペースに知り合いを見つけては挨拶をしていた。

 大広間では足の低い丸い中華テーブルがあり車座に六人が座った。畳の上にその丸いテーブルは12卓並べられていた。70人程の出席だ。全学年120人程だから半分以上が出席していた。
 幹事の井田が挨拶をする。相変わらず人を笑わせ口がうまい。いずれ市会議員でもなるのではないかと思わせるような名司会ぶりだった。そしてその後に元担任が挨拶する。全員が70歳を過ぎて、みんなの将来を先見せしてるかのようだった。酒が回らないうちに記念撮影を撮り、その記念写真は同窓会の帰りに渡してもらえるということだった。なんでも井田の写真館の若いスタッフがついてきていた。デジタルカメラでは待つことなく今の時間が切り取られる。時代はあの頃より確実に進歩していた。

「おぉ〜い健三」
酒が入った一博はもう遠慮いらないのか、昔のように下の名前で呼び始めた。
「健三、花火っていくらぐらいするんだ」
健三の花火師というのはクラス全員に意外だったらしい。健三自身、また妻である美香にとっても健三が花火師になったことは意外の一番だった。
 「小さいのは3000円位で、大きいのになると、ん百万円がある」
ぶっきらぼうな言い方だ。
「同窓会で100発あげるといくらになるんだ」
「種類にもよるが50万から100万だ」
「ひえ〜高いな〜、ただの火薬と紙だろ」
健三はカチンときた。ただの火薬と紙に命を懸けてるからだ。正真正銘死んだ同業者はたくさんいる。
 だが、健三は言い返さない。気分が悪い時は反対を向いて喋らなくなるだけだ。だから知らない人間が見たら愛想がない男となる。もう何を言っても喋らないのだ。だから必然的と健三の周りには誰もいなくなった。時々それを見かねた、健三をよく知らない同級生が酒を注ぎに来た。一言二言交わし,またお決まりのように去っていく。それでも健三はそれで普通と思ってるのだから空気が読めない男だ。