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アントイーター

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「これで、全部ですかね?」

「はーい、ありがとうございます」

そういって少しガタイの良い引越し屋さんに手を振りこれから住むべきアパートを見上げる。
普通のアパートよりかなりオシャレで海外にいると思わされるデザインだ。
これからの私生活が少し楽しみである。
親は小さいころすぐに他界、残されたお金で何とか生きてきた。
自分より1歳年上の兄と2歳年下の妹がいて二人とも顔の作りは良いので、アイドルやモデルの仕事をし、自分は家事が得意なので家全般のことはすべてしていた。

そして大学生になり、兄妹はそのまま芸能界の仕事を続けている感じだ。
選んだ大学は県外、さすがに電車などで行ける距離ではないので一人暮らしになった。
 
「ちょっと寂しいなぁ」

ここのアパートの人と仲良くなれるかな、近場のスーパーで何を買おう、などと考えていると

「すみません、少し良いですか」

「え、あ、はい」

二人の中年の男性が私に声をかけるとこういうものですが…と言い、刑事ドラマによく出るあれを出してきた。うわー、初めて生で見た。

「最近、ここらへんでの事件についてはご存知ですか?」

「事件?すいません、越してきたばかりで何も…」

二人は顔を見合わせ「そうなんですか、すみません」
続いて少しおっとりとした感じの人が顎に手をのせ
「とういうことは、この辺で起きてる事件も知らないのですね」と言う。



作品名:アントイーター 作家名:麗潤